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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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VRは発想の制約を取っ払う理想空間

第7回 GOROman こと 近藤義仁・エクシヴィ代表取締役社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

「Hackする」ことへのこだわり

長島 面白いつながりですよね。昔はパソコンやソフトを改造するのが流行りましたが、近藤さんは今もハードやソフトを改造するのがお好きのように見えます。

近藤 そうですね。自宅も外からスマホでいろいろ操作できるよう改造しています。いわば「おうちハック」です。この「Hackする」ことへのこだわりは、僕の原点ですね。工業高校の電気科で学んだことが影響しているのかなと思います。「Modification」の略である「Mod(モッド)する」も近いですね。

長島 なるほど。この辺りで主力事業であるVRやARの話題に移りたいと思います。私も近藤さんとお付き合いを始めてからVRの本質について考えているのですが、空間をうまく切り取って、それを重ねたり、間引いたり、時間をずらしたりして共有する。そんなことをイメージしているのですが、近藤さんの考えるVRやARの本質とは何でしょう。


近藤 よく誤解されるのですが、バーチャルは「仮想」ではありません。本来は「実質的な」と訳すべきです。バーチャル・メモリーは実質的にメモリーとして使えますし、バーチャル・マネーも実質的に使われています。日本ではバーチャルに適した言葉がなかったので、誤訳されたまま現在に至っているのが実情なのです。バーチャルの対象も視覚だけではありません。聴覚や嗅覚など五感すべてが対象であり、脳の中で実質的に本物と思わせるものがVRだと言えます。

長島 今は視覚と聴覚が進んでいますが、嗅覚や味覚はどこまで進むと思いますか。

近藤 技術的に難しいと思います。光や音は波なのでデジタル化しやすい特性がありますが、味やにおいのもとは微粒子などですから再現しにくい。やるならインクジェットプリンターのカートリッジのように、あらかじめ微粒子を装着しておいて噴射するくらいでしょうか。それを超えようとするなら、神経に直接刺激を与えるしかありません。

長島 映画『マトリックス』の世界ですね。

近藤 はい。例えば近い将来、ウナギが絶滅して「バーチャルウナギ」が発明されるかもしれません。実はゴムを食べているのに「やっぱ、ウナギうめー」とか(笑)。

長島 いやだー(笑)。それはさておき、VRで人間は新しい感覚とか能力を身に付けられるでしょうか。

近藤 僕が取り組んでいるのは、VRで無重力空間を作り、空間に浮かんだ状態で仕事をすることです。重力を無視できるので、仕事に必要な文書や撮影した写真などを360度どこにでも表示することができる。そうすれば発想の制約を取っ払えるんじゃないか。理想的なクリエーティブ空間ができるんじゃないかと思うんです。

長島 映画『マイノリティ・リポート』に似たような場面がありましたね。

近藤 あれは、手が重たくて8時間働くのはムリです(笑)。今のデバイスは重力を受け止めるための形状をしており、そこから変えないとダメですね。

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