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経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

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ケース31:不動産保有会社を格安M&A?

弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

今回の悩める経営者:富沢商事株式会社 代表取締役社長 富沢とみざわ松夫まつお(66歳)
相談内容

 先生、M&A、やっちゃって!すごく、いい話が舞い込んじゃってね。埼玉の国道沿いに、ウチがやっている100円ショップチェーンの大きいのを作ろうと探していたんです。

 ちょうどいいなあ、って思う場所があって、そこに、なんだか流行(はや)っていない、古びたビジネスホテルがポツンとあるんです。眺めていたら、ホテルのオーナーらしき人が声をかけてきて、話してるうちに意気投合。それから近くで呑んだんだけど、延々と愚痴(ぐち)を言い出すわけ。客は来ない、気が合う従業員は辞めて残ったのは生意気なヤツばっかり、子どもは継ぐ気がない......。もう経営するのしんどくなって、ちょうど手放そうとしてたところだったんだって。

 じゃあ、ウチが買いますよ、って言ったら、何か目輝かしちゃってね。肝心の値段の話になったら、「上モノ付で、こんだけ。更地にするなら、そっちで勝手にやってくれ」。値段は、時価にプレミア乗っけて、ついでに使わないホテルの残存価値がくっついて、さらに、足元みて強気の、ギリ乗っかれそうな値段を言ってくるわけ。食えねえなあ、なんて思ってたら、安く売る方法がある、って提案してきたわけ。

 ホテルは会社所有になっていて、土地も建物も、担保のない、キレイなものになっているけど、土地建物だけ切り売りするのはかなり面倒くさいらしい。土地建物を手放して会社を廃業すると、地元でいろいろ噂されて、カッコ悪いらしい。だから、会社の株は100%オーナーの所有になっているから、これを買ってもらって、「今流行りの、エムアンドエーってのにして、体裁をよくしてくれ」って言うわけ。

何でも、書店やってる同じ世代の経営者仲間が、経営不振で廃業する際、「うちは廃業じゃねえ、エムアンドエーだ」って何かカッコつけたこと言って楽隠居しているのを聞いて、「エムアンドエーして楽隠居の形にすればいいんだ」なんて思い込んでいる様子。

 しかも、目先のカネは早い方がいいし、スパッと決めてくれるなら、価格も安くていい、って言って、土地の時価ベースで7割くらいの金額ってことまで言っている。株を買ったらすぐ廃業して、上モノ壊して、来年には開業して、オリンピック景気に乗っかりたいしね。ということで、先生! ちゃちゃっと、M&Aよろしく!


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