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IoTの勘所

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電気ポットによる高齢者見守り事業が16年続く理由

象印マホービンの事業担当者 川久保亮氏に聞く

 こうした問題の解決に要したのが上記の4年という歳月だった。まず、家の中の配線工事の問題は、無線通信技術の進歩で解決した。

<b>第2世代のIoT電気ポット</b> 第2世代のIoT電気ポット

 「携帯電話通信事業者のNTTドコモが自動販売機の在庫管理に無線通信を利用している事例を開発担当者が見つけ、その技術を使えば家の中の工事が不要になることがわかりました。電気ポットに無線通信用の部品を入れれば済みます」(川久保氏)。

<b>底面に組み込まれている無線通信用の部品</b> 底面に組み込まれている無線通信用の部品

 また、家族が電気ポットの利用状況を確認する際にパソコンと専用のソフトウエアが必要になる問題は、携帯電話と電子メールが解決した。携帯電話がインターネットにつながるようになり、誰でも簡単に電子メールが受信できるようなったのである。

 しかし、技術の進歩だけがこの見守りサービスを実現したとみるのは早計だ。より大きなカギとなったのは、開発担当者が4年にもわたってこのサービスを継続的に検討し、会社がそれをバックアップしたことだろう。ICTは進歩が速いといわれるが、無線通信技術がこれほど急速に普及するとはほとんど予想されていなかった。そうしたなか、同社が見守りサービスの開発を継続したのは注目される。

電気ポットの新しい価値として周知を徹底

 続いて川久保氏に聞いたのは、IoT電気ポットを活用した高齢者見守りサービスの事業戦略である。高齢者見守りサービス自体がほとんど知られていないときにどのように有償の事業であるこのサービスの契約数を増やしたのか。また、契約数は順調に増えたのだろうか。

 象印マホービンが初代の通信機能付き電気ポットで、高齢者見守りサービスを開始したのは2001年3月21日のことだ。無線通信と電子メールを活用したため、利用者は電気ポットが届いたその日から見守りを開始できる。サービスは、通信機能付き電気ポットのレンタル料金と無線通信費用を含んで月額3000円で提供された。

 見守られる側のお年寄りは通信機能を装備した電気ポットを普通に利用するだけでよい。見守る側の家族は「電源オン」「給湯」といったポットの利用状況を、1日に2回、登録したメールアドレスにメールで受信できる。

 「実証実験のころから、多くのお年寄りはかなり規則正しく生活していることがわかっていました。家にいれば、同じような時間に電源を入れてお湯を沸かし、一定の間隔でお茶を飲んでいます。ご家族は電子メールでこの状況を見守ることができるうえ、お年寄りも、給湯するたびに家族に自分の行動を知らせていると意識できます」

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