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超入門 資本論

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資本論が示す格差社会を生き抜く3つの方法

経済入門書作家、経済ジャーナリスト 木暮 太一氏

 ドイツの思想家・経済学者、カール・マルクスが著した『資本論』は、資本主義経済の構造を徹底的に分析しており、20世紀以降の全世界に最も影響を与えました。TVコメンテーターとしても活躍する木暮太一氏は「扱っているテーマは価値・商品・給料・製造・流通など、ぼくらのビジネスに身近なもので、自分の立場に置き換えて考えることができます」と指摘します。資本論を読み解きながら、労働者がこの世を生き抜く方法を4回にわたり紹介します。

『資本論』を今の自分の立場に置き換えて考える

 『資本論』には、労働者が搾取され、虐げられていく状況が分析されています。

 この先の資本主義経済を生き抜くためには「労働者が搾取され、虐げられる理由」を読み解き、その逆をいけばいいのです。

 その観点から『資本論』を読むと、大きく分けて次の3つの対策を導き出すことができます。

①変化耐性をつける
②能力を汎用化させる
③「自分の売り物」を用意しておく

 では、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

【①変化耐性をつける】

 マルクスは、資本主義が発達し、機械制大工業が浸透すると「全体的に発達した個人」が登場すると言いました。今の言葉で言うと、“ジェネラリスト„です。

 生産技術が進化するにつれて、作業工程・作業内容が次々に変わり、人間の労働者がそれに対応していかなければいけません。いろいろなことができなければいけないのです。

 また、生産技術が改良され、労働者が不要になった産業が出ると、そこで職を失い新たな産業に「転職」しなければいけません。労働者は生きていくためには新しい業界で仕事ができなければいけません。そして、さまざまな能力を身につけなければいけません。「全体的に発達した個人(ジェネラリスト)」にならなければいけなかったのです。

 結果的に、「全体的に発達」できるとしても、労働者にとって、このプロセスは非常に痛みを伴うものです。というのは、要するにこれは「解雇される→再チャレンジする」というプロセスだからです。

 マルクスが表現したように「いっさいの平穏、堅固、および安全」が失われる人も多かったかもしれません(新日本出版社刊『資本論③』P837)。

 ただ、この苦しいプロセスを踏めば、結果的に「全体的に発達する個人」ができ上がります。

 現代は、言うまでもなく高度に発展した「機械制大工業」の経済です。

 ただ、マルクスが指摘したこの苦しいプロセスを全員経験しているかというと、そうではありません。たしかに現代でも、異動や出向があり、〝ジェネラリスト〟が育成されています。でも、そうはいっても、その会社組織の範囲内です。正社員であれば会社の中での異動が主になるでしょう。

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