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しくじる会社の法則

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バックヤードに会社の「素顔」が見える

ジャーナリスト 高嶋 健夫氏

 「しくじる会社」と「伸びる会社」はどこが違うのか。35年以上の取材歴、会った社長も約1000人。経験豊富な企業ウオッチャーだから語れる、財務データではわからない会社の見分け方を紹介します。4回目は「お店に行ったら、バックヤードをのぞく」――。

お店に行ったら、バックヤードをのぞく

よいお店を見分けるポイントは「人の動き」 よいお店を見分けるポイントは「人の動き」

 物販店でも、飲食店でも、「良いお店」を見分けるチェックポイントは、やはり「人の動き」です。それを規定する「動線」と「段取り」を見ればいいのです。ただし、お店の場合は、工場とは違って、「お客様の目線」と「店員さんの目線」の双方から観察する必要があります。「動線」は説明不要でしょうが、お店の場合の「段取り」とはつまり、お客様が商品を見比べたり、手に取ったりしやすいような展示・陳列ができているかとか、ショッピング中のお客様の邪魔にならないように商品補充するノウハウとマナーが身についているか、といったことです。

 実際には、両者はかなりの部分がオーバーラップしますから、お客様がストレスなく買い物や食事を楽しんでいるお店は、店員さんの接客対応・サービスもそつがないし、その逆もまた同じということになります、当たり前の話ですが。でも、これさえ押さえておけば、青山通りの高級ブティックだろうと、東十条商店街や砂町銀座の八百屋さんだろうと、芦屋や帝塚山のおしゃれなフレンチレストランだろうと、天神橋筋商店街の気さくなたこ焼き屋さんだろうと、詳しい商品知識やグルメの素養がなくても、見た目の印象などに幻惑されることなく、「良い店」をかなり正確に見分けられると思います。

 具体的なチェックポイントとなると、取り扱い商品や価格帯、立地条件、ターゲット層などなど業種・業態ごとに、それこそ星の数ほどありますので、それはそれぞれの専門書に譲ります。

 私の専門分野で一例だけ挙げると、シニアビジネスに関わっている読者なら、東京・新宿の京王百貨店新宿店を視察するとよいでしょう。いくつもの百貨店が林立する全国有数の激戦区の新宿にあって、この店は一番古く、一番小さいにもかかわらず、高齢者層の熱い支持を集める〝シニア一番店〟として、百貨店業界ではつとに知れ渡っています。

 行ってみても、一見すると、どこにでもある普通のデパート。ですが、フロア設計にも、商品の展示・陳列にも、主力客であるシニア層が若い人たちの目を気にすることなくショッピングが楽しめるように、キメ細やかな配慮や工夫が随所にちりばめられています。一番わかりやすいのは、婦人服などの商品タグ。袖口などあまり目立たないところに付けるのが〝業界標準〟ですが、ここでは堂々と胸のあたりに付け、価格も大きな文字で表示しています。見やすさへの工夫であると同時に、お値段への不安、心配をまずは解消するような配慮でもあるのです。

 店作りのプロを帯同して見に行けば、至るところで、東京ディズニーリゾートの〝隠れミッキー〟のような独特な剏意工夫を発見できると思います。

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