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社長の「想い」、伝わっていますか?

マネジメントソリューションズ 有馬亮二氏

 私は、このような従業員の声をキャッチできた社長は、むしろ幸運だと思います。さきほど述べたようにこうしたネガティブな声はなかなか社長に届きません。聞きつけたときは、ぜひ、「なぜ従業員がそう考えるのか?」「なぜ目的が伝わらないのか?」を振り返り、目標や目的を伝えるためのアクションを起こしてほしいと思います。それも単純な数値目標や形式的な目的ではなく、社長の「想い」という形で表現して伝えることが不可欠です。

 「想い」とは相手の心に届くメッセージと言い換えてもよいでしょう。単純な数値目標ではなく、例えば「業界や地域で一番の会社になろう」「20年後も繁盛する会社になろう」といった挑戦的なわかりやすい目標です。そして、より重要なことは「想い」を確実に伝えることです。

「想い」を伝えるための3つの工夫

 「想い」を伝えるには具体的にどのようなアクションが必要なのでしょうか?筆者が知る成功事例をご紹介しましょう。

 この企業では、さらなる成長(売上倍増)のため、支社における営業のやり方を大幅に変革しました。「お客様に感動していただく」という「想い」の実現に向けて、顧客満足度やエンゲージメント(ブランドへの愛着度)を高めるようにした結果、売上目標を達成しただけではなく、営業担当者の「考え方」が変わり、持続的な成長を実現しています。この変革プロジェクトではリーダーの「想い」を伝えるために3つの工夫を行いました。

(1)ポンチ絵を描き、繰り返し発信
 本社から、営業改革というテーマを与えられた支社では、変革プロジェクトを立ち上げ、改革に必要なアクションに対応して、担当者一人一人が行う活動(タスク)を定義し、それぞれの緻密な実行スケジュールを策定しました。

 そして、キックオフミーティングでその計画を関係者に発表する際、リーダーとなった支社長がこだわったことがあります。それは「なぜ、この改革を実施するのか?」を、シンプルに伝えることでした。それまでの経験から、一つ一つの活動が有機的に結びつかないと変革が失敗することを知っていた彼は、「お客様に感動していただく」ために、すべての活動が結びついていることを、ポンチ絵として描き、プロジェクトの期間中、常にそのポンチ絵を使って、一人一人にメッセージを発信し続けたのです。

 支店長を集めて行う、月次のマネジメント会議では、自身の経験や他社・他業種の事例をもとにさまざまな角度から、ポンチ絵で言わんとしていること、すなわち「ありたい姿」を発信しました。理解している人にとっては、くどいと感じるぐらいだったそうです。

(2)双方向のコミュニケーション
 また、支店長には、「『お客様に感動していただく』ために、自分たちに何ができるか?何をすべきか?」について、それぞれの支店で議論しまとめてきた資料をもとに、マネジメント会議で発表をしてもらい、その内容に対して支社長が考えを述べるといった双方向のコミュニケーションを行いました。ときには、厳しく批判・指導しながら、頻繁に意見交換を行っています。メンバー自身の言葉で語ってもらうことで、各自の理解を深める狙いがあります。

(3)人材とノウハウを持続的な組織に移転
 このような地道な努力のおかげで、メンバーは常に目的を見失わず、プロジェクトの目標を達成しました。また、プロジェクト完了後もその基盤を生かして改善を続けています。具体的には、リーダーの「想い」を理解したプロジェクトの中核メンバーが、経営企画部門に配属となり、プロジェクトと同様な活動を続けることで、日々、生じている経営課題をいち早く発見して、関係部門に解決を依頼する仕組みを定着させました。加えてプロジェクトで定義した「お客様に感動していただく」ための業務プロセスについては、定期的なワークショップを通じてさらなる改善を行っています。

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