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GRIT!やり抜く変革マネジメント

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社長の「想い」、伝わっていますか?

マネジメントソリューションズ 有馬亮二氏

 しかし、これだけ多くの変革プロジェクトが実施されながら、社長が成功と感じるものはあまり多くないのが実情でしょう。変革プロジェクトによって、売上高・利益率・成長率などに関する数値目標を達成したにもかかわらず、「変革が成功したとは思えない」と感じる場合さえあります。

 そこで、この連載では、そうした状況をあえて「変革の失敗」と表現し、「変革がなぜ失敗するのか?」という基本的な問いに対する答えを、仮想的な例も交えて提示したいと思います。第1回は変革プロジェクトの「本当の成功」にとって外すことができない、リーダーの「想い」を伝えることの大切さについて考えます。

 なお、連載タイトルの「GRIT」は「Guts、Resilience、Initiative、Tenacity(ガッツ・回復力・自発性・執念)」の略で、アンジェラ・ダックワース氏の著書『やり抜く力』(神崎朗子訳、ダイヤモンド社)などで知られるようになりました。筆者も「GRIT」をモットーに日ごろのコンサルティングを手がけています。

自信を持って自身がリードした変革が成功したと言えますか?

 さて、先ほど「変革の失敗」と表現しましたが、失敗の状況はさまざまです。企業の社長など、変革リーダーの方からよく聞くのは以下のような言葉です。

(1)「設定した目標(KPI:重要業績指標)を当初は達成しました。でも......」
 在庫を削減するために、販売と生産部門が連携するプロジェクトを推進。プロジェクトが終了して半年間は在庫が減ったが、それ以降は逆に在庫が増えた。
(2)「新しいITシステムが導入されて対象の業務は効率化されました。でも......」
 営業担当者が外回りから戻って書いていた営業報告書や会社で行っていた情報共有の会議による残業を減らすため、情報共有システムの導入プロジェクトを推進。プロジェクトが終了してから残業は減ったが、会社の業績は悪化した。
(3)「経営層は成功したと喜んでいます。でも......」
 経営者の意思決定における精度・スピード向上へ、マネジメントレポートを毎日作成する体制の構築プロジェクトを実施。プロジェクトが終了して、経営・マネジメント層は現状をタイムリーに把握できるようになったが、現場はマネジメントレポート作成に費やす時間が増えて本業に支障が出ている。

 一方、それぞれの状況を従業員の立場から見ると、以下のような言葉になります。

(1)「結局、設定した目標を達成したのはプロジェクト完了当初だけでした。その後はだんだんギリギリになって今では全く達成できず、ただの努力目標になっています」
(2)「確かに、情報共有システムを導入したおかげで、無駄なメールや、情報共有のためだけの会議は減りましたが、データを入力するのが仕事だと思う営業担当者が増えてお客さんへの訪問が減りました。本末転倒ではないでしょうか?」
(3)「現場は何か良くなったっていう実感が全くありません。そもそも、このプロジェクトを実施した理由が、いまだにわかりません」

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