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グローバル市場インタビュー

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プロセスを確立し、リスクに挑む英国式

ケンブリッジコンサルタンツ リチャード・トレハン氏に聞く

 技術開発の効率化が日本企業の経営課題となっている。グローバル競争の激化やITを中心とする急速な技術の進化が、旧来型の日本のものづくりに変化を迫っているためだ。英国のケンブリッジコンサルタンツは、技術と戦略のコンサルティング分野で独自の地位を築き、日立製作所やアサヒビールなど日本の大手企業との共同事業も多い。このほど来日したチーフ・コマーシャル・オフィサーのリチャード・トレハン氏に、ケンブリッジコンサルタンツの強みや日本企業の技術開発力を高めるための処方箋を聞いた。

顧客との緊密な連携でノウハウ伝える

リチャード・トレハン氏(Richard Traherne)<br>

ケンブリッジコンサルタンツ チーフ・コマーシャル・オフィサー。海外事業成長及び顧客関係戦略の責任者。2003年入社、無線通信における経験を生かし、10年間ワイヤレス部門を率いた。入社以前は、様々な組織でマネジメントと開発の役割を担い、海外市場に向けて革新的な製品と技術を生み出してきた。顧客と協働した、効果的なイノベーションによる事業成長を得意としている。 リチャード・トレハン氏(Richard Traherne)
ケンブリッジコンサルタンツ チーフ・コマーシャル・オフィサー。海外事業成長及び顧客関係戦略の責任者。2003年入社、無線通信における経験を生かし、10年間ワイヤレス部門を率いた。入社以前は、様々な組織でマネジメントと開発の役割を担い、海外市場に向けて革新的な製品と技術を生み出してきた。顧客と協働した、効果的なイノベーションによる事業成長を得意としている。

――ケンブリッジコンサルタンツは世界の優良企業と組み、数多くのイノベーションを生み出しています。他の技術系コンサルティング会社と比べ、どこに特色や強みがあるのでしょうか。

 まず、他の技術系コンサルティング会社とはビジネスモデルが大きく異なります。当社は顧客の技術戦略の策定から、具体的な製品のコンセプトづくり、技術評価、製品開発、試作品の製作まで一貫して手掛けます。一連のプロセスの前工程は戦略コンサルティング、後工程は受託開発会社の機能と一部競合しますが、一貫して請け負うところに当社の強みがあります。また、ブレイクスルーとなる全く新しい分野の技術を対象とする点も特徴です。

 一貫して手掛ける強みの一つが、顧客との緊密な連携です。例えば、顧客の製品開発のプロセスに当社のエンジニアが深く関わり、チームを組んで開発を進めます。その過程で、顧客は当社が持つイノベーションを生むノウハウを実地に学ぶことができるわけです。当社ではこれを「Learn by Doing」と呼び、重視しています。

 もう一つ、当社は1960年にケンブリッジ大学の産学共同組織として発足しており、同大学の優秀な人材を採用しやすい環境にあります。1年生の時から優秀な学生には奨学金を出すかわりに、夏休みなどにはアルバイトをしてもらう「テック・スカラー」と呼ぶ制度も設けています。医薬、情報技術、機械工学など、様々な分野やスキルを持つ技術者をそろえやすいことが、イノベーションを生み出す土壌にもなっています。

――優秀な人材がそろうということですが、社内ではどんな人材育成策を取っていますか。

 大きく4つの施策に取り組んでいます。まず、コンサルティングのプロを養成するためのキャリアパスを整備しています。最高経営責任者(CEO)であるアラン・リチャードソンも当社に30年以上前に入社し、様々な経験を経てトップに上り詰めた、いわば「たたき上げ」と言えます。

 2番目に、様々な分野をローテーションさせる仕組みを取り入れています。自分の中に多様な引き出しを持つことがイノベーションを生むヒントになるからです。技術分野を変えるだけでなく、顧客も大企業からスタートアップまで経験させたり、様々なコンシューマー市場を担当させたりしています。もちろん、それぞれが中途半端になっては意味がありません。幅広い経験から学びつつ、特定の分野では深い知見も持つ「T字型」人材の育成を目指しています。

 3番目はビジネス感覚を養うこと。技術だけ知っていても、顧客の収益拡大につながらなければ当社の存在意義はありません。若いうちからプロジェクトを通じて学んでいきます。最後の4番目は10~15%ルール。これは勤務時間の10~15%を本業以外の関心分野や趣味に使っていいというものです。創造性を養ってもらう狙いで、実際にいいアイデアがあれば予算を付けて事業化しています。1990年代から実施しており、たぶん米グーグルより早いはずです。

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