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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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「ものづくりの民主化」はロックだ!

第6回 稲田雅彦・カブク代表取締役CEOに聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

長島 最近会った人では、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を手掛けるエクシヴィのGOROmanこと近藤義仁社長ですね。アイデアが次々に出てくる、あの頭脳がほしいです(笑)。あとは、SAPジャパンからパナソニックに移籍した馬場渉さん。やはり発想力が飛び抜けていて「宇宙人」だなと思います。話を戻して、誰もがものづくりを始める世の中になると、既存のメーカーはどうなるでしょう。大量生産・大量消費を前提に投資してきているわけですが、成り立つのでしょうか。

ハードのスタートアップを増やすには

稲田 ものづくりの民主化の流れは止まりません。市場の多様性が広がり、より良いモノが買えるようになれば、消費者にとって大きなメリットがあるからです。企画力やコンセプト力を高めなければ、製品はすぐに陳腐化し、コモディティー化して利益が上げられなくなります。ですから事業プロセスのうち、川上の企画や研究と、川下のサービスや保守の付加価値が高く、真ん中の製造の価値が低下していく「スマイルカーブ」はグーンと深くなるでしょう。

長島 今は下請けといわれ、日の目を見ることが少ない中小企業が顧客と直接つながっていきますね。そうすると、今までバリューチェーンにはなかった要素が加わり、個人や企業関係者の右脳が刺激されるという効果も期待できませんか。

稲田 そうですね。ソニーや松下が出てきたような時代がまた違った形で来るはずです。ハードウェアスタートアップが増えるための環境として、インフラはだいぶ整備されてきましたが、資金のハードルはまだ高い。ここがクリアされれば、もっともっとハードウエアのスタートアップが出てくると思います。今はまだ事例が少なく、数少ない成功企業に過度の期待がかけられがちです。例えば、アウトドア用カメラで脚光を浴びたGoProは、少し成長率が落ちただけでたたかれてしまいました。そうではなくて、ニッチな分野で高シェアの企業がたくさんあるのが望ましい姿であり、民主化と言えるのではないでしょうか。

長島 私もそういう元気な企業がいっぱい出てきてほしいと思います。一方で、日本には多くの巨大メーカーが存在します。プロトタイピングなど新しい技術をどんどん取り入れ、経営のスピードを上げていくべきだと思うのですが、まだできていませんね。

稲田 今の経営環境は、自動車のハンドルでいう「遊び」が少ないんじゃないでしょうか。昔はコンプライアンスにしても市場の圧力にしても、もっと緩かったから、自然に新しいことができたんだと思います。今は意図的にサンドボックス(失敗できる場)やテストベッド(システム開発のテスト環境)を作らないと進みません。

長島 私たちもカブクとの提携により、日本を代表する大企業とスタートアップが協力しつつ、切磋琢磨できる環境を作っていきたいと思っています。

稲田 スタートアップに流れる投資額は米国が年間8兆円に対し、日本は2000億円と40分の1に過ぎません。1社で世界を変えるアップルのような企業は生まれにくい。だからこそ、大企業と連携してイノベーションを生み出す流れを太くしていきたいですね。

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