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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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「ものづくりの民主化」はロックだ!

第6回 稲田雅彦・カブク代表取締役CEOに聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

長島 自分の内部とチームとが相似形になるわけですね。もっと多くの人々に持ってもらいたい感覚です。少し話を戻して、AIとものづくりを掛け合わせる取り組みについて詳しく教えてもらえますか。

AIをチームに溶け込ませる工夫

稲田 10年ほど前、AIや、あらゆるモノがネットにつながるIoTが話題になり始めたころは、ディスプレーの中でしか扱えない技術でした。3D CADソフトの無料化、3Dプリンターの低価格化や大容量通信などの技術環境が整ってきたここ5年くらいで、ようやく実際にモノに落とし込めるようになってきたところです。

 先ほど話したKKD(経験、勘、度胸)のように、人間の知能の優れたところを生かすのが日本のものづくりの強みです。それらをデータとして蓄積できるようになってきた。10年の熟練工の技が、AIとロボットアームで2時間で学習し、再現ができたケースもあります。もう少しデータを蓄積できるようになると、特定の分野、作業において完全に人間は勝てなくなるかもしれません。

長島 そうなると人間は、もっとクリエイティビティーの高い仕事に時間を使えるようになります。半面、人の仕事が奪われるのではないかという負の側面も無視できません。

稲田 製造業の現場では反発に遭いやすいのは確かですが、自分としては「ものは使いよう」だと思っています。AIとAIを組み合わせて新しい知能を作り出すとか、人とAI、あるいは様々な装置を使って、今までにないクリエーティブなものを生み出せる。AIがチームに加わることをいいきっかけとして捉える。その方が楽になるし、楽しいかと。

長島 AIと人間は全く違うことをやるのでなく、同じチームメートとして共働していくわけですね。その場合、そのAIが何をやっているか、周りの人間がちゃんとわかっていることが大事だと思うんです。その方が、さらに面白いことができるし、日本のものづくりの強みを次の時代につなげていくためにも必要ではないでしょうか。

稲田 サッカーでいうと、今までフォワードとバックスで固定していたポジションに、リベロとかボランチといった新たな役割のプレーヤーが入ってくる感じですね。最初は勝手に動かれて厄介だなと思われますが、慣れてくると、どう使えば効果的かがわかってくる。使い方がわからないから様子見するのでなく、とにかく使って慣れることが大事だと思います。クラスに転校生が入ってきた時、思い切って声を掛ければ、すぐに友達になれますよね(笑)。

長島 AIは自分の中に多様なキャラクターを持つためにも使えそうですね。

稲田 うまく活用すれば、自分の能力を拡張することも可能でしょう。数学やバイオの世界ではすでに、AIなどのソフトウェア技術をうまく使って新たな発見につなげる取り組みが始まっています。自分もメディアアートや作曲などに使っていましたが、これも新たな創造のアプローチだと考えています。

長島 ちょっと答えにくい質問かもしれませんが、もし自分の中に3つのAIを取り込めるとしたら、どんな知性が欲しいと思いますか。

稲田 難しいですね。ビジネスの世界で言うと、テスラやスペースXを創業したイーロン・マスクでしょうか。同じカテゴリーの産業にいますが、素晴らしく早く、圧倒的な方向に進んでいると思うので。あと、自分は大阪人なので、明石家さんまさんの即興話芸とか、しゃべりの能力があるといいなと思います。最後はフィリピンのプロボクサー、マニー・キャッパオですかね。自分も格闘技をやっているので憧れの存在です。長島さんはどうですか。

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