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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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「ものづくりの民主化」はロックだ!

第6回 稲田雅彦・カブク代表取締役CEOに聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

全員が勇者では「小さな山」しか登れない

稲田 マサチューセッツ工科大学(MIT)の石井裕教授が「これからの人たちはルネサンス・ボーイズ&ガールズだ」と話していたのを読んだことがあります。社会の問題を解決する手段は様々で、サイエンス、エンジニアリング、アート、デザイン、ビジネス、すべての要素が必要になる。そして、こうした要素を自分たちが持つ必要がある、というような意味でした。米国では文系の学生が大学院でコンピュータサイエンスを専攻したり、エンジニアが経営学修士(MBA)を取得したり、といったダブルメジャー、トリプルメジャーは当たり前であり、自分もそうした学生の志向はよく理解できました。

長島 私は理系、文系、ビジネス系といったところでしょうか(笑)。これからの日本には境界をまたいで活躍する人材がもっともっと必要だと思いますが、どのように育成していけばいいでしょうね。

稲田 学際教育、教養教育が一番大事かなと思います。自分は好奇心が強くて、履修していない授業も「モグって」受けたりしていました。AIの研究環境はもともと横断的で、ありがたかったですね。僕のいた学会もジーパンにTシャツで、飲んで議論することもあり、まさにロックでした(笑)。

長島 それはうらやましい話ですね。稲田さんのようにいろんなことに興味を持って活動している人は、その道の専門家に知識量では負けていても、対等におもしろい話ができたりしますよね。なぜ、できるんでしょうか。

稲田 とはいえ何かしら、1つでも専門を持っていると強いのかなと思います。MITメディアラボの創設者、ニコラス・ネグロポンテは「ある分野で長く議論されてきた難問が、異なる分野では数時間の議論で答えが見つかることもある」と語っています。最適解を一番大きな山、局所最適を小さな山とすると、すごく有能な専門家集団は、得てして小さな山に全力で登ろうとしがちです。ほかの山が見えていない。一歩引いて見ることのできる異分野の専門家の方が大きな山を見つけられる。それは多様性の力だと思います。

長島 確かに、ありますよね。

稲田 ロール・プレーイング・ゲーム(RPG)に例えると、全員が勇者では小さな山しか登れません。戦士や魔法使いなどいろんなキャラクターがパーティーを組んでこそ、大きな山に登れる。特に、変化の激しい環境では、何も知らない人、あるいは突然変異の人は尊重されるべきですね。これは理論的にもありますし、自分の経験からも痛感しています。

長島 いろんな人とパーティーを組むというお話ですが、稲田さん個人の中にも様々なキャラクターのパーティーがあるように見えます。そういう個人が集まると、最強の集団になるんですかね。

稲田 シリコンバレーのスタートアップ企業の人たちには、そういう志向があるかもしれません。何でもできる人が集まれば、環境に応じて柔軟に役割分担を変えることもできるでしょう。

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