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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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「ものづくりの民主化」はロックだ!

第6回 稲田雅彦・カブク代表取締役CEOに聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

長島 確かにそうですね。先ほども少し話がありましたが、「ものづくりの民主化」というコンセプトについて、もう少し詳しく教えてもらえますか。

眠れる中小工場をスターにしたい!

稲田 雅彦氏(いなだ まさひこ)<br>

カブク 代表取締役CEO。<br>

「モノづくりの民主化」を掲げて2013年、株式会社カブクを設立。3Dプリンティングによるデジタル製造プラットフォームを立ち上げる。トヨタ自動車、ホンダのパーソナルモビリティへのカスタマイズパーツの提供を行うほか、グローバルでのデジタル工場向け基幹業務クラウド提供など、デジタルものづくり分野でさまざまな企業と協業し、高い注目を集めている。東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。大阪府出身。 稲田 雅彦氏(いなだ まさひこ)
カブク 代表取締役CEO。
「モノづくりの民主化」を掲げて2013年、株式会社カブクを設立。3Dプリンティングによるデジタル製造プラットフォームを立ち上げる。トヨタ自動車、ホンダのパーソナルモビリティへのカスタマイズパーツの提供を行うほか、グローバルでのデジタル工場向け基幹業務クラウド提供など、デジタルものづくり分野でさまざまな企業と協業し、高い注目を集めている。東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。大阪府出身。

稲田 自分はもともと大学院で人工知能(AI)を研究していました。今から10年ほど前ですが、当時であってもまだ傍流中の傍流で「学問と言えるのか」とまで言われていました。しかし、米国ではすでにグーグルが自社サービスの技術に応用しており、日本でも本格的に利用される時代が来ると思っていました。その後、博報堂に入社して、今で言うビッグデータやAIの考え方を生かして、デジタル広告のプラットフォームを立ち上げる新規事業に携わりました。

 コンピュータの世界をリードしてきた米シリコンバレーには、根底に「デジタル・デモクラタイゼーション」つまり「デジタルの民主化」の考え方があります。マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」に対して、ソースコードなど仕様をすべて公開したオープンソースOSである「リナックス」とか、今だとネットで空いた車を探せるウーバーや、民泊サイトのエアビーアンドビーなどもそうですね。オープンにして裾野を広げ、より大きな山にみんなで早く登っていこうという「大きなデジタルの民主化のうねり」が、ここ十数年のイノベーションをリードしてきました。

長島 まさに、その通りですね。

稲田 このデジタルの流れを、ものづくりの世界にも持って来られないかと思ったんです。私はものづくりの街として知られる東大阪の出身ですが、シャープや三洋電機などの不振で工場が減り、かつてのような活気が減ってきています。従来の製造業の発想とは違う山の登り方で、よりオープンに多様なプレイヤー達が切磋琢磨しながら早く大きな山を登ることで、ものづくりの世界を元気にしたい。それが「ものづくりの民主化」を掲げた理由です。

長島 具体的には、どんな山の登り方になりますか。例えば、一般の消費者も手軽にものづくりができる「メイカーズ」の世界のようなイメージでしょうか。

稲田 最終的にはそうですね。今は企業でさえ、一定のロット数が見込める、つまり市場で相当数の売り上げが見込める製品でなければ生産に踏み切れません。ITの分野では製作コストが安いので、リスクをとったチャレンジができます。ものづくりの世界でも、このハードルを下げられれば、未来のソニーやホンダが生まれやすくなると思っています。

 一方、いい技術を持っているのに眠っている工場も多い。私たちはものを作りたいというニーズや、海外工場のネットワークを持っていますから、こうしたプラットフォームを活用していただく、つまり「共創」の関係を作りたいと考えています。言葉や慣習の壁を超えて海外に飛躍するスター工場を一つでも多く育てたいですね。

長島 ものづくりを知らない個人と、すごい技術を持ちながら一般には知られていない中小工場。両者をつなぐ役割というのは、高いコミュニケーション能力が求められると思います。稲田さんは様々な経歴をお持ちですが、それが役立っている面はありますか。

稲田 言われてみると、確かに破天荒なキャリアですよね(笑)。それがコミュニケーションに役立っているかどうかはわかりませんが、好奇心が強いことは今の仕事にプラスになっているかもしれません。私自身、もともと音楽が好きで、高校まではミュージシャンになりたいと思っていました。大学に入ってもメディアアート活動をしたり、AIに作曲をさせてDJをさせたりと、好きなことを自由にやっていました。

 大学院で専攻したAIは学際的な学問で、コンピュータサイエンスのほか、数学、心理学、社会学の要素もありました。研究室で議論されるテーマも、純粋なアルゴリズム、金融、バイオ、ロボット、アートなど様々で、ロックな雰囲気でしたね。博報堂にも様々な分野が得意な人がいて、「理系・文系・芸(術)系」の集まりなどと言われたりしていました。

長島 聞いているだけで楽しくなりますね(笑)。

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