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石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

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複雑なものを、複雑なまま、ビジュアルに!

電脳クリエイターの出雲翔氏に聞く

予防医学者 石川善樹氏

「複雑だからわかりにくい」はおかしい

出雲 料理の例で言うと、ひとつひとつの「レシピ」や「食材」といった料理を構成する要素の特性ではなく、まずは「和食」や「洋食」というように、それぞれの要素がどのように集まり、どのようなパターンや構造を作り出すのかを理解しなければなりません。下図の「フードギャラクシー」は食の世界全体を見せるために、世界各地の6700の食材を3次元上にマッピングしています(クリックしてください)。

石川 そういえば、データを可視化する際に、3次元と2次元とで何か違いはありますか?

出雲 人間は3次元でものを見ていますから、その方が直観的に理解しやすく、腹落ちしやすいと思います。右脳的な理解を促すのにも有効です。一方、理屈は2次元の方がわかりやすい。左脳による理解ですね。よりよく理解するには両方が必要なのは言うまでもありません。

石川 なるほど、3次元でパッと把握した後、2次元で具体的に理解するという感じですね。

出雲 よく「複雑だからわかりにくい」と言われますが、これはおかしいんです。

石川 というと?

出雲 複雑は客観的な状態であり、わかりにくいは自分の心の状態。イコールで結ばれるものではありません。状態として複雑でも、そこに構造があれば、人は理解できます。それが複雑なものを複雑なまま見せる意味かなと思います。

石川 なるほど。それは言い換えると、どのようなことなのでしょうか?

出雲 要は秩序を探す旅なんだと思います。物理学では秩序から無秩序へ向かうという「エントロピー増大の法則」があります。ところが地球はその法則にあらがい、秩序を保っています。詳しい説明は省きますが、簡単に言うと地球のような外部環境に対して開かれた非平衡系では「エントロピー生成は最小化する」、つまり秩序に向かいます。地球上にはたくさんの秩序がありますが、複雑すぎて人間には理解しにくい。だから昔から多くの人がシンプルにして理解しようと試みてきました。そして秩序を発見できた人が、その時代の新しい学問や産業や文化を作ってきたのではないかと思います。

石川 深いですね!

出雲 データには構造があり、構造には意味があります。そして、その構造が私たちに新たな気づきを与えてくれるのです。

石川 人間が得意なことと、機械が得意なことをそれぞれ押し進めることで、空白地帯だった「現実世界」に近づいていける。これこそが出雲さんが目指す「人間とコンピューターの共創」なのですね。

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