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宅配がなくなる日

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ドライバーが個宅を訪問する宅配をなくそう

フロンティア・マネジメント 代表取締役 松岡 真宏氏、シニア・アナリスト 山手 剛人氏

 配送量増大や人手不足によって、宅配ネットワークが崩壊しようとしている。この問題を解決するには、個々の企業の経営戦略や取引契約といった表層を追うだけではなく、長期的な消費者行動や価値観にまつわる社会システムの変容というダイナミズムから読み解く必要がある。最終回はメッシュ(網目)状に大量の宅配ロッカーを配備することで、ドライバーが個宅を訪問して回る宅配サービスを減らす方法とその実現性について説明したい。

 第1回第2回で述べてきたように、宅配サービスのラストワンマイルにおける「再配達問題」は、人口動態や生活スタイル、ひいては「時間価値」という人々の価値観の変化が複雑に絡み合った構造問題なのである。このため、従来の宅配網を前提とした受け渡しの当事者間のコミュニケーション改善や、ポイント制度のようなささやかなインセンティブを導入するだけで解決できる類の問題ではなく、これまでとは異なる形の宅配ネットワークを再構築していく覚悟が必要だ。

ソフトドリンクの自販機のように宅配ロッカーを配備

 突き詰めて考えていくと、慌ただしく移動する私たち、忙殺される宅配ドライバー、事業拡大を続けたい宅配企業やその顧客(EC企業)の幸福度の総和を最大化するための新しい宅配ネットワークに最も近いのは、日本全土に250万台が設置されているソフトドリンクの自動販売機のような形かもしれないという思索にたどり着く。

 自動販売機のように、駅、ショッピングセンター、コンビニに限らず、誰でも24時間利用できる宅配ロッカーが住宅地、オフィス街、工場、公共施設、医療機関、教育機関などあらゆる場所にメッシュ(網目)状に配備されれば、再配達が減らせるだけでなく、宅配企業における労務問題の解決や利用者の満足度にも貢献する可能性があり、関わる人々の幸福度の総和が自由市場の力によって最大化される状態(厚生経済学で呼ぶところの「パレート最適」)に向けて、大きく前進するのではないか。

 宅配ロッカーが自動販売機と同じような契約体系で設置されれば、その後の自己増殖も可能だ。

 宅配ロッカーの設置費用(150万~200万円/台)は、自動販売機と同じように、設置場所を提供する事業主や個人が負担することを原則とするべきである。宅配企業は効率化できた人件費や輸送コストの見返りとして、利用回数(24時間ごとに荷物を投函した件数)に応じて宅配ロッカーの保有者に手数料を支払う。荷物を受け取る人は荷物を発送した時点で既に宅配企業あるいはEC企業に手数料を支払っているので、ロッカーから取り出す際には追加費用はかからない。初期投資を終えた後は取引件数に応じたフィーを得るビジネスとなる。自動販売機1~2台分のスペースを想定するならば、荷物を格納する箱の数は1件当たり20個がせいぜいだが、それでも、365日体制で7割の稼働率となれば、共用ロッカーは年間5000個の宅配荷物の受け渡しを担える。

 注目したいのは、拠点数が増えていくというポテンシャルだ。あくまでも遊休資産を活用したセカンドビジネスとして個人や零細企業などに宅配ロッカーを設置してもらうのであれば、そのハードルは決して高くない。現在のような金融緩和のゼロ金利時代ならばなおさらだ。ソフトドリンクの自動販売機を保有している人に直接アプローチして、宅配ロッカーに鞍替えしてもらうことだって可能だろう。

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