日本経済新聞 関連サイト

泉田良輔の「新・日本産業鳥瞰図」

記事一覧

世界ビール業界再編したドライなM&A、次はどこか

GFリサーチ 泉田良輔氏

 酒税法改正などにより今後、競争環境が変わっていく国内のビール業界。麦芽の割合が高い「ビール」と、割合が低い「発泡酒」、ビール風味の「新ジャンル商品」(以下、新ジャンル)の税率が経過措置期間の後、同率になるため、一段の競争激化が予想されている。税率の変更は2020年(平成32年)10月1日から2026年(平成38年)10月1日まで6年かけて行われる[1]

 そうした漸進的な国内の環境変化をよそに、海外では大手がファイナンスを軸にしたドライなM&A(合併・買収)を展開し、業界再編を進めている。国内のビールメーカーは、国内における少子高齢化の進展、さらには若者のビール離れとともに、そのグローバルな競争環境変化という荒波に対応して、事業戦略を練っていかなければならない。

 そこで今回は、海外大手ビールメーカーの再編を振り返り、成長戦略としてのM&Aの進め方と今後の展開について考えてみたい。記事で取り上げるのはビール業界であるが、M&Aによる業界再編は幅広い業界で起きており、他業界の方々も参考になるはずだ。

業界下位プレーヤーが競争ルールを変えた

 世界のビール業界は今、1強の時代を迎えている。世界最大のビール会社はご存知の方も多いかと思うが、ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)である。同社はもともと業界下位プレーヤーに過ぎなかったが、大型の戦略的なM&Aを繰り返して急成長した。おおまかにいうと、ベルギーのインベブが2008年に米アンハイザー・ブッシュを買収してABインベブが誕生。さらにABインベブが2015年に英SABミラーの買収を発表し、2016年にその買収を完了している。

 株式市場もABインベブのここまでの実績を評価している。下図は、ABインベブ、オランダのハイネケン、デンマークのカールスバーグ、ヨーロッパの株式指数としてMSCI AC Europe[2]の株価指数を示している。なお、同株価指数はヨーロッパの先進国15か国、新興国6カ国を含んだ株価指標である。ここでは2004年5月末を100とし、2017年6月9日までの株価を追っている。

<b>世界の主要ビール企業と欧州株価指標の推移</b> 出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成 世界の主要ビール企業と欧州株価指標の推移 出所:SPEEDAをもとにGFリサーチ作成

 ABインベブの前身であるインベブは、2004年にベルギーのインターブリューがブラジルのアンベブを買収して誕生した。それ以降、株式市場で同社の株価は好調に推移していたが、2008年のリーマン・ショックによって大きく下落する。

PICKUP[PR]