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経営層のための「稼ぐ力」を高める不動産戦略

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知らないと損する企業不動産財務の視点

JLL 執行役員 コーポレート営業本部長 佐藤 俊朗氏

 ヒトに次ぐ第2の経営資源である企業不動産へカネをどう使うか、その資金をどう調達するか、そしてその資本投下によりどれだけビジネス利益が高められるのか。企業不動産におけるこの財務の視点を持った経営が、企業の「稼ぐ力」に大きく影響する。今回は企業価値の評価にもつながる企業不動産に関する財務管理と、働き方改革の推進にもつながる今後のオフィスづくりへの資本投資について、重要なポイントを解説する。

企業不動産にこそ戦略的な財務が必要

日本企業は多くの不動産資産を抱える 日本企業は多くの不動産資産を抱える

 まず、財務(英語ではファイナンス)とは、今後の企業戦略を投影し、先を見通して資金の投資、調達、回収の線表を策定し、実行管理するというCFO(Chief Financial Officer 最高財務責任者)が中心に行う専門的な経営管理業務である。財務管理の目的は、投資からの利益を最大化することにある。

 この経営管理を、所有と賃借にかかわらず、企業がビジネスのために自ら使うために事業施設や内装や付帯設備内装工事への資本的支出やランニングコストを対象にして戦略的に行うのが企業不動産財務である。

 企業不動産を戦略的に管理運営している欧米大企業では、不動産管理部門はCRE(Corporate Real Estate)と呼ばれ、CFOと密に連携している。多くは、CFO直轄の部門で財務部門の管理下にある。企業財務において不動産がそれほど重要視されている。なぜならば、ほとんどの企業にとって不動産は、P/L(損益計算書)上人件費に次ぐ2番目に大きな固定費であり、B/S(貸借対照表)上の総資産に占める割合においてトップ項目だからである。

不動産管理のあり方も企業価値評価の対象

 特に日本企業においては、欧米企業の同業種企業と比べて、販間費に占める不動産関連コストの割合が高く、総資産額に占める不動産の割合は、製造業においては2~3倍高い傾向にある。このコストや資本構造にあって、日本企業の利益に見る資本効率は、主要先進諸国のなかで極めて低い水準にあると指摘されている。

 ある大手サービス企業クライアントのCFOは、「最近よく海外からの株主やパートナー企業から、都心部の本社ビルを含め、なぜ簿価千億円もの不動産を保有している必要があるのか? この資産は持っていた方が経営効率は良いのか? とストレートな質問を受けるようになってきた」と話す。

 上場企業の場合、株主の厳しい目が注がれるが、特に海外の株主は財務分析により、日本企業への投資において、B/S上の不動産資産の重たさや、利益見合いの不動産資産効率の低さを敬遠する。合点のいく財務戦略が不動産管理においても実施されているかどうかで、株主からの企業評価も大きく異なってくる。

 しかし、もったいないことに、財務の視点を持って戦略的に不動産予算策定と予実管理を行っている日本企業は未だ少ない。経営層が自社の不動産コストや資産と、事業利益との関連性を明確に把握しておらず、企業価値向上のチャンスを見過ごしてしまっている。

 また、大きな資本支出を伴う長期の経営判断となる不動産投資を、短期的なコストが高いか安いかを主軸として決裁し、後は事業部門がその許容範囲の中で実施するというのが大方の日本企業に見られる負の実態である。これでは戦略的に不動産に資本投下しているとは言えない。

 いったん、企業不動産へ財務的視点でメスを入れてみると、企業価値改善の手段が眠っている宝の山だということが分かる。

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