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なぜ混んだ道で余計にタクシー運賃を払うのか?

東京女子大学現代教養学部 教授 竹内健蔵 氏

 「お支払い」というとすぐにお金の支払いを思い起こすけれども、実は私たちはその他にもいろいろなものを支払っている。その代表的なものが時間による支払いで、行列というのは時間による支払いである。時間を多く支払うことができる人、つまり「ヒマはあってもカネがない」人にとって行列は有利な方法で、「カネはあってもヒマがない」人にとって行列は不利な方法となる。金銭を払う方法と時間を払う方法を私たちは世の中で使い分けている。この理屈がわかると、割り込みが非難される論理的な理由、道路混雑が不満な理由、人気ラーメン店が行列を放置する理由がはっきりとしてくる。

タクシーでのイライラにも機会費用が関係する

 タクシーをよく使う人も多いだろう。タクシーを使うと便利で快適である一方、都市では道路混雑の状況しだいで到着時刻が読めないという問題がある。渋滞した道路にはまってしまって、いつ目的地に着くかわからない、約束の時間に間に合わないかもしれない、ということでイライラしてしまった経験を持つ人も多いに違いない。

 しかし、それと同時に(あるいはもっと)イライラするのは、運賃メーターの数字である。渋滞で、1メートルどころか1センチさえ動かなくても運賃は上がる。同じ場所から同じ目的地に行く場合でも、道が混んでいる日とそうでない日とで倍近く違う運賃を払わされた、という経験を私もしたことがある。

 一方、JRの列車に乗っていて列車が遅れるのも、タクシーの場合と同様に予定が狂うので困ることに変わりはない。確かに、新幹線料金や特急料金を払っているのに列車が遅れてしまったら、「特別」に「急行」したかったのに(だから「特急」という)、料金を支払った意味がなくなってしまう。ところがありがたいことに、JRの規則によると、特急列車(新幹線を含む)は予定の時刻よりも2時間以上遅れたら特急料金を払い戻してくれるという制度がある(たとえば、東海旅客鉄道株式会社「旅客営業規則」第282条)。

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