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経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

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ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!

弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

今回の悩める経営者:アルティメット・リベラル株式会社 代表取締役社長 古市ふるいち太刀郎たちろう(62歳)
相談内容

 先生、どういうことですか! あきらめろって! 当社には正義があるんです! 正義は勝ちます! これは聖なる戦いです!

 そりゃね・・・。宿題はやっていませんよ・・・。先生から、「訴訟したけりゃ、過去3年の取引記録ややりとりを経過にそってきちんと整理してきてください。この宿題をやってきてもらえないと、前には進みません」って言われたことは覚えていますし、この宿題をやってきていないのは事実です。

 とはいえね、担当者が5人替わり、担当者が使っていたパソコンは半分壊れていて、記録もメールも、何から何までどこに行ったかわからずじまいで苦労しているんです。データが消失してしまってはいるんですが、相手に勝手に取引条件を変えられて、3年にわたって、合計300万円ほどの差額対価の損害が出ていることは、これはもう、明らかな事実なんです。真実なんです。神様に誓ってもいい。
 
 そりゃあ、当初の契約はあいまいでしたし、その後、何度か単価修正合意があったことも事実です。ですがね、3年前の営業担当トップの役員協議の後は、単価は変更ないはずなんです。
 
 それを、相手方は、うちの担当者が無知というか、弱気というか、やる気がないというか、そういうポヤンとしたところに、つけ入り、勝手に、しれっと、わからないように、姑息に、ちょこちょこ、単価修正をして、合法的に、当社からカネを盗んでいるんですよ。
 
 先生から文案をいただいた内容証明を送りつけ、一部未払いの代金精算を求めましたが、相手は、うちの過去のボンクラ担当者があいまいに同意というか確認したかのようなEメールの応答部分だけを一部つまんできて、あたかも、当社も代金減額を容認していたかのような、真っ赤な嘘っぱちの話をうまいこと創作して、木で鼻を括ったかのような態度で、すっとぼけている!
 
 だから、訴訟なんです! 裁判なんです! 戦いなんです! 出るとこ出て、彼らの非道を暴くんです!

 データ復元には、外部のIT専門家に依頼しなければなりませんし、それも100万円近くかかるし、それよりも何よりも、本来営業をガンガン行かせて商品を売ってくる部課長を、こんな後ろ向きな話にかかわらせていると、機会損失が大変なことになります。

 ほんとに、取引記録を復元したら、外部の専門家への支払いや内部人件費や機会損失やら含め、300万円を超える損害が生じます。しかも、これだけ費用を費やして、事実経緯を整理しても、裁判をするとなると、さらに、弁護士費用、裁判所に納める費用がかかり、そのうえ、先生に訴状を作成してもらい、法務担当者を貼り付け、場合によっては、証人尋問で関係者を出頭させ、と、気の遠くなるようなコストと時間とエネルギーを消耗するんでしょ。

 でもね、絶対に負けられない戦いがあるんです。こんなことを放置したり容認していたりすれば、正義や真実はどうなるんです?! 日本の未来や、正しい社会の創造はどうなります! 当社の正義は、絶対ですし、これを社会に問わなければなりません。でもなあ......宿題は大変だしなあ。カネかかるしなあ。そんなヒマないしなあ......。
 
 もう、先生、どうすりゃいいのっ!
 なんとかして! つか、教えて!

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