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あなたの人生は「選ばなかったこと」で決まる

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「お買い得」の意味を機会費用で説明すると

東京女子大学現代教養学部 教授 竹内健蔵 氏

商品を買うのは、その商品に機会費用以上の価値があるから

 第2は、機会費用は、選ばれた選択肢の価値そのものではないということである。2つの選択肢A、Bがあるとして、選択肢Aが選ばれたとしよう。選ばれなかった選択肢Bの価値は、Aの「機会費用」であっても、Aの「価値」ではない。

 このことは先に、ある会社が「お、ねだん以上○○○」というキャッチコピーをテレビコマーシャルで流していた件を思い出せばわかる。もしある商品の価値が機会費用と同じ価値しかなければ、その商品には機会費用(他の選択肢を選んだときの価値)以上の価値がないことになるので、そのようなものは買っても買わなくてもどうでもよいことになる。

 私たちは、その商品に機会費用以上の価値があるからこそ、その商品を買う。その商品自体の価値は、私たちがその商品についてどれだけ支払ってもよいと考えるか(経済学では「支払意思」と呼ばれる)で決まる。この支払意思額が機会費用を上回れば消費者はその商品を買うし、下回れば買わない。

 私たちはその商品を買うときにはお金を払わなくてはならない。私たちは、仮にこの商品を買わないで、支払わずにすんだお金を別のことに使ったらどれだけの幸せを得ることができるかを考える。そしてそのときの幸せよりもこの商品を買ったときの幸せの方が大きいから、この商品を買うのである。このとき、この選択した商品を買わなかったら得られたであろう幸せが、この商品の機会費用となっている。

 ちなみに支払意思額と機会費用の差は、経済学では「消費者余剰」と呼ばれ、これが大きければ大きいほど、私たちにとってその商品は「お買い得」ということになる。

 誤解を恐れずに言えば、機会費用はある選ばれた選択肢そのものの価値ではなく、その商品が持っている最低限の価値(少なくとも機会費用分だけの価値は持っている)といってもよいかもしれない。たとえば、東京ディズニーリゾートの価値の計測方法は、東京ディズニーリゾートの持つ最低限の価値を求める方法である。

 選ばれた選択肢は機会費用よりも大きい価値を持つのが普通である。

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