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日本とロシアの関係は「呉越同舟」

藤 和彦 氏

 近年、東シナ海や南シナ海でロシア海軍と中国海軍の共同軍事訓練が行われるようになったが、中国政府が「輸入原油の8割、輸出入貿易全体の6割が通過するマラッカ海峡が安全保障のチョークポイントである」との認識を高めている証左である。

 2014年のウクライナ危機後、欧米諸国との関係が悪化する中で、ロシアは必要以上に中国傾斜を余儀なくされたが、中国のジュニアパートナーにならないためにインドやベトナム、日本との関係強化を図っている。2016年11月にプーチン大統領が承認した「ロシア連邦対外政策概念」には、「アジア太平洋地域の安全保障のため日本との善隣関係を構築する」と記載されている。

 ウクライナ危機後も日ロ両国の安全保障会議事務局による戦略協議から、海上自衛隊とロシア海軍による共同訓練に至るまで、さまざまなレベルでの協議・交流が続けられている(2016年12月9日付日本経済新聞)。

 中国が東アジア地域で覇権を握ろうとすれば、地政学の観点から見て日本とロシアの関係は「呉越同舟」とならざるを得ないのではないだろうか。

 領土問題と経済協力のバーターを疑問視する声もあるが、ドイツ統一直後にドイツに滞在していた筆者は、多くのドイツ人が「旧ソ連にドイツ統一を認めさせた陰の功労者はパイプラインである」としみじみと語っていたことを今でも鮮明に記憶している。

 「冷戦崩壊時にドイツ統一が可能となったのは、西ドイツがガス輸入を通じてソ連との間に相互依存関係を作り、ソフトパワーを行使した結果でもあった」と先述の下斗米氏は述べている。ロシアの専門家の間では「北方領土を返還し、日本と同盟を結ぶべきである」と主張する論調もある。

 エネルギー、特に天然ガスの低廉かつ安定的供給体制を、日本がロシアとの間で確立すれば、急膨張したために「我」を失いつつある中国に対する大きなプレッシャーとなり、東アジア地域のパワーバランスが回復できるのではないだろうか。

藤 和彦 著 『石油を読む(第3版)』(日本経済新聞出版社、2017年)、第4章「新しいエネルギー戦略を目指して」から

藤 和彦(ふじ かずひこ)

経済産業研究所上席研究員
1960年愛知県生まれ。1984年通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー政策などの分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)、2011年に公益財団法人世界平和研究所に出向(主任研究員)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』(日本経済新聞出版社)、『シェール革命の正体』(PHP研究所)など多数

石油を読む(第3版)

著者:藤 和彦
出版:日本経済新聞出版社
価格:928円(税込)

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