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石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

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強さとは信頼、「ゲーム道」究める

東大卒プロゲーマー、ときど氏に再び聞く

予防医学者 石川善樹氏

ときど あの場面を見て、僕が「ストファイ」で梅原さんにボコボコに負けた試合を思い出したんです。あの時、梅原さんも無心だったと気がついたのです。当時はあまりに完璧なプレーだったので、まるでコンピューターじゃないかと思っていました。そうじゃなくて、無心の領域だったんだなと。ようやく謎が解けたように思いました。

ゲームを通じ、人として成長

石川 最近、格闘ゲームはeスポーツとも呼ばれます。ただ、スポーツと武道はちょっと違う。格闘ゲームも武道であると捉えると、もっと面白くなると思うんですね。

ときど 僕がゲーム道という言葉を使うのは、ゲームを通じて人として成長できることを広く伝えていきたいからです。相手に敬意をもって練習や試合に臨み、お互いに切磋琢磨する。武道の考え方はゲームにも通じます。武道の定義を僕なりに考えると、1つのことを究める過程で、厳しい修行に耐えて自分の人格を成長させること。これはゲームでもできるはずだと信じています。

石川 なるほどー、深いですね。

ときど ただ、格闘ゲームと武道の違いは、さっきも言ったように実際に痛みを感じるかどうか。空手では、ちょっとよこしまな考えで相手と戦っているとすぐにばれて、師匠に痛いお仕置きをされます(笑)。体で覚え込ませることも必要なのです。でもゲームでは痛いのはキャラクターだけ。逆にその分、武道よりも深く相手のことを考える想像力が必要になるでしょうね。

石川 柔術と柔道の違いは、ビジネスの世界にたとえると、事業と産業の違いではないかと思います。事業をつくるにはライバル会社に勝てばいい。でも産業をつくるにはライバルとともに発展しなければいけない。戦後、日本の復興を主導したソニー、ホンダ、松下電器(現パナソニック)などは産業を興すことを考えていたんじゃないでしょうか。視点が高いなと感じます。

ときど 武道とスポーツのもう一つの違いは競技性というか、勝ち負けをはっきりさせることです。柔道はオリンピックに採用されて以降、ルールが何度も改正されて、それに適応しなくてはならなくなりました。一方、剣道は勝ち負けにこだわりすぎると剣道本来の精神性が損なわれるとして、日本はオリンピック種目にすることに反対しているそうです。ではゲームはどうかというと、ルール作りはほぼメーカーが握っています。ルールが変われば、プレーヤーはそれに対応するしかない。でも僕は、メーカーの思惑通りに対応してゲームをやることに意味があるのかなと思っています。

石川 それはどういう意味ですか。

ときど よく人から「ゲームって、人が作ったものでしょ。そこで勝ったとして何の意味があるの」と聞かれるのです。確かにそういう面はあるのですが、その答えが「お金をもらえるから」だけというのはイヤなんです。それ以外の答えがほしいのです。

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