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石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

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強さとは信頼、「ゲーム道」究める

東大卒プロゲーマー、ときど氏に再び聞く

予防医学者 石川善樹氏

ときど ゲームに対する考え方がだいぶ変わりました。「強さって何だ」という問いの答えも自分なりに見えてきたと思っています。

石川 その答えを聞く前に、これまではどういう気持ちでゲームに取り組んできたんですか。

結果にこだわる故に、結果が出なかった

ときど氏<br>

本名は谷口一(たにぐち・はじめ)。沖縄県生まれ。東大工学部マテリアル工学科卒、同大学院中退。2010年、日本で2人目となる格闘ゲームのプロゲーマーに。現在はマネジメント事務所TOPANGA所属。年間に出場する国際大会は10を超え、海外大会での優勝回数は常にトップクラスを誇る。主な実績は、「EVO2013」準優勝、「Community Effort Orlando 2016」優勝、「South East Asia Major 2016」優勝など。著書に『東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にはかなわない』(PHP新書)。 ときど氏
本名は谷口一(たにぐち・はじめ)。沖縄県生まれ。東大工学部マテリアル工学科卒、同大学院中退。2010年、日本で2人目となる格闘ゲームのプロゲーマーに。現在はマネジメント事務所TOPANGA所属。年間に出場する国際大会は10を超え、海外大会での優勝回数は常にトップクラスを誇る。主な実績は、「EVO2013」準優勝、「Community Effort Orlando 2016」優勝、「South East Asia Major 2016」優勝など。著書に『東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にはかなわない』(PHP新書)。

ときど 目先の勝利さえ追えばいいと思っていました。それがすべてでしょ、と。でも30歳を目前にして、とんでもない負け方をしてしまった。「ストリートファイター(以下、ストファイ)」というゲームで、自分の方が強いキャラクターを使い、相手より長い時間をかけて練習しているのに、こてんぱんにやられてしまったのです。結果さえ出せばいいと思ってやっているが故に結果が出ない。どうしていいかわからなくなりました。

石川 壁にぶつかったということですか。

ときど そうですね。それまで現役の時の受験失敗とか、大学院の中退とか絶望感を味わうこともあったのですが、あいまいなまま通り過ぎてきました。プロゲーマーになって壁にぶつかって初めて、自分がどういう人間か考えさせられた。そして、過去にレールを外れた理由がわかったような気がしました。

石川 ある意味、アイデンティティーの崩壊に直面したわけですよね。その壁をどうやって乗り越えたんでしょう。

ときど 「このゲーム(ストファイ)、もうちょっとやってみた方がいいんじゃない」。プロゲーマーの先輩である梅原大吾さんの何気ない一言が、立ち直るきっかけになりました。僕なりに時間をかけて練習していたつもりだったので、最初は半信半疑だったのですが、とにかくやってみようと割り切って、ほかのゲームは一切やめました。

石川 それまではいろんなゲームをやっていたわけですね。

ときど はい。いろんなゲームで勝つことに価値を見いだしていました。でも、僕を負かした相手とか梅原さんはゲームを1つ(ストファイ)に絞っていて、それにかけている。結局、その方が強いんだと気づかされました。

石川 人って、自分が本当にダメだと思わないと変われないんですね。僕も部活でラクロスをやっていて、なかなかレギュラーになれませんでした。いつも「自分の方がうまいのに」と心の中で思っていました。するとある日、先輩から「おまえ、なんで自分が試合に出られないんだと思ってるだろ。そう思っているうちは成長できないよ」とズバッと指摘されたのです。そこで初めて、自分が試合に出られない理由がわかりました。僕の人生を支える言葉です。それからは、自分はダメだとたくさん思えた方がいいんだなと考えるようになりました。

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