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「機会費用」を知れば彼女にフラれてもOK?

東京女子大学現代教養学部 教授 竹内健蔵 氏

「私の機会費用はどうしてくれるんだ!」

 ともあれ、彼女は彼氏とのデートのために家庭教師先にバイトを休むことを伝え、片道500円の運賃を支払って、午後6時に新宿駅に到着したものとする。ところが彼氏が来ない。10分待っても、30分待っても、60分待っても、90分待っても彼氏は姿を現さない。その場でメールをしても返事はないし、電話をしてもつながらない。どうやら彼氏はこのデートをすっぽかしたようだ。彼女は腹の虫がおさまらないまま、新宿駅を後にし、自宅に戻ったとしよう。

 ちなみに、実際に私も東京駅で待ち合わせた彼女に待たされたことがある。何とか彼女は現れてデートは成功したものの、仕事で遅れたという彼女に、「私の機会費用はどうしてくれるんだ」などと心の中で思ってしまうところが経済学を学んだものの因果なところである。これからこの彼女には本書でたびたび登場してもらうことになる。

 さて話はもとに戻って、この後、彼女と彼氏の間に何が起こったかはお察しのとおりである。当然、彼女は彼に電話をかけて彼の行動をなじる。ここで彼女が機会費用の考え方を知っているかどうかで、彼女の彼氏への攻撃方法は違ってくる。もし機会費用の考え方を知らないならば、彼女は次のように言うかもしれない。

 「私はあなたと会うためにわざわざ電車賃まで払って新宿まで行ったのよ。往復の電車賃の1000円くらい返しなさいよ!」

 この1000円は実際に彼女のお財布から出ていったので、彼女がお小遣い帳を持っていれば、その支出欄に1000円という数字が確実に書き込まれるはずである。これは現実の支出であり、損失であり、そしてもちろん費用である。

 ところが、彼女が機会費用の考え方を知っているならば、次のように言うかもしれない。

 「私はあなたと会うために家庭教師のバイトもサボって電車賃も払って新宿まで行ったのよ。家庭教師のバイト代の5000円と往復の電車賃1000円の6000円を払ってもらわないと割があわないんだけど!」

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