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「機会費用」を知れば彼女にフラれてもOK?

東京女子大学現代教養学部 教授 竹内健蔵 氏

 正直に白状するが、私自身、機会費用の定義をはじめて読んだときは、これが何をいっているのかさっぱり理解することができなかった。しかしそれでは恥ずかしいので、周りにはさも理解できているようなふりをしつつ、本当に自信をもって機会費用のことを語れるようになったのは、大学院生(しかも博士後期課程)の頃ではなかったかと思う。機会費用というものがさっぱりわからなかった私が、まさかその後に機会費用についてこのような本を書くとは思ってもみなかった。

 こんなややこしい文章をいくら眺めていてもどうしようもないので、これからはもっと具体的な例を材料に考えてみよう。

デートをすっぽかされたら泣き寝入りするのか

 次のようなありがちな状況を考えよう。

 いま、ある女子大生が彼氏とつき合っているとする。あるとき、彼女は彼氏から電話をもらい、明日の午後6時に新宿駅で待ちあわせて一緒に食事でもしよう、とデートに誘われた。彼女の自宅から新宿駅までは電車賃が片道500円かかる。

 しかし明日の午後6時から8時までは、彼女には家庭教師のバイトが入っていて、バイトをすると時給2500円で合計5000円の収入が得られることになっている。

 彼女は彼氏のことをなかなかに気に入っており、今回のデートの誘いが、そろそろ勝
負どきではないかと考えているものとする。さて、彼女はどう行動するだろうか。彼女の選択肢は2つある。1つは、家庭教師のバイトを休んで彼氏とデートをするという選択肢、もう1つは、彼氏の誘いを断って家庭教師のバイトをするという選択肢である。さんざん悩んだあげく、彼女は彼氏とのデートを選択したとする。このとき、なぜ彼女は彼氏とのデートを選んだのかを考えてみよう。

 彼女はこの2つの選択肢を頭の中で比較した。そして、彼氏とデートすることの幸せが家庭教師のバイトをすることによる幸せを上回ると考えたから、家庭教師のバイトを休んで彼氏とのデートを選んだのだといえる。言い換えれば、彼女は家庭教師のバイトをしていれば5000円の収入が得られたのだから、彼氏とのデートは5000円以上の価値があると考えたのだろう。それだけではなく、さらに往復1000円の電車賃を払っても惜しくないと考えたのだから、彼氏とのデートには合計6000円以上の価値があると彼女は考えたことになる。

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