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あなたの人生は「選ばなかったこと」で決まる

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「機会費用」を知れば彼女にフラれてもOK?

東京女子大学現代教養学部 教授 竹内健蔵 氏

 私たちには欲しいものがたくさんある。しかしほとんどの場合、そのうちの1つを選択すると、他のものはあきらめなくてはならない。このとき、自分が選んだものよりもあきらめたものの方が人間の行動を雄弁に語る。どうして、選択しなかったものの方が選択したものよりも重要なのだろうか。このことを考えていくと、経済学が金勘定の学問だという先入観が吹き飛ぶだろう。さまざまな社会の謎を解く鍵が、ここで明らかにされる。

費用とはお金だけなのか

 善と悪、白と黒、プラスとマイナス、明と暗というように、世の中ではものごとを2つにわけることが多い。実はややこしげに見える経済学だって、見方によってはものごとを単純に2つにわけて考えている。その2つとは、「幸せ」と「不幸せ」である。これらは「プラスの感情(快)」と「マイナスの感情(不快)」といってもいいだろう。

 私たちが買い物をするときのことを考えてみよう。商品を買ってそれを使うと幸せを得ることができる。おなかが空いているときにレストランでパスタを注文して、それを食べれば幸せである。「幸せ」とは、その人にとっての「プラスの感情」である。

 その一方で、「不幸せ」も発生する。パスタを注文すれば後でレジに行って代金を払わなくてはならない。財布からお金が出ていくことは決して楽しいことではないので、これは「不幸せ」であり、その人にとって「マイナスの感情」である。

 その人がパスタを食べることを決心したのは、パスタを食べることで得られるプラスの感情、つまり幸せと、パスタを食べることで財布からお金が出ていくマイナスの感情、つまり不幸せの2つをくらべて、幸せが不幸せよりも大きかったからだ、ということになる。言い換えれば、幸せから不幸せを引いたら幸せがいくらか残るからパスタを注文したのだ、と考えることができる。

 仮に、パスタを食べて入ってくる幸せより、お金が出ていくという不幸せの方が多いと思ったら、その人はそのレストランに行かないか、行ったとしても別のメニューを注文することになるだろう。つまり、幸せから不幸せを引いたときに幸せが残ると思ったときだけ、私たちはその商品を買う。

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