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IoTの勘所

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IoTへの取り組みを成功に導く3つのカギ

東京大学大学院工学系研究科 教授 森川博之氏

 その顧客や社会の高いハードルを超える方法の1つは「伝える」能力に優れた人材の活用だ。森川氏は、欧米の大学には「ディレクター」と呼ばれる役割のスタッフがいて、優れた研究を行う「教授」の成果を顧客や社会に伝えることで、イノベーションを起こしていると指摘する。ディレクターは研究資金を集めたり、研究のマーケターや広報担当者として働いたりする。日米で教員や学生数が同程度の技術系大学を比較したところ、ディレクターの役割を果たすスタッフの数が日本の15倍にもなる米国の大学があったという。

 「伝える」人材に加えて「伝える」場があれば、イノベーションはさらに起こしやすくなる。「高い問題意識を持つ人々が、ともに考えることが有効です。特に、異業種の人たちが集まり、異なる視点で問題意識を共有する "場"を作ると、IoTのような新技術の意外なニーズに気づけ、イノベーションの起点になります。こうした場は、企業の中でも実現することができます。部署をまたいで作るとよいでしょう」

 こうした"場"は、都市はもちろん、地方においても作ることができる。森川氏は「地方の良いところは、コミュニティーが小さいところです。ITソフトウエア会社、塗装業者、電気店の社長が仲良しといったことはよくあります。こうした異業種が出会うことで、新しい気づきが生まれ、IoTによるイノベーションが実現できる可能性があります」と話す。

 IoTは大企業から中小企業まで、都市から地方までの幅広いビジネスにおける競争力強化のカギを握っている。取り組まなければ企業や地域の存亡さえも脅かす一方、成功すれば大きな成果を得る可能性を秘めている。その可能性を実際に花開かせるためには、経営者が「事業体制」「競争相手」「人材」に対する意識を自ら率先して改めていくことが必要である。

(フリーライター 岩元直久)

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