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IoTの勘所

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IoTへの取り組みを成功に導く3つのカギ

東京大学大学院工学系研究科 教授 森川博之氏

「気づく」「伝える」に優れる人材を評価・育成せよ

 さらに「人材」については、IoTによるイノベーションを推進する能力に優れた人材を評価・育成すべきであるという。森川氏は、ビジネスで求められる基本的な能力を「気づく」「考える」「試す」「伝える」の4つに分けて説明した。取り組むべきテーマを探し出す「気づく」能力、得られた気づきを基に「考える」「試す」を繰り返して生産性や付加価値を高める能力、さらにその利点や必要性を顧客などへ「伝える」能力である。

 「これまで日本企業は、4つのうち、真ん中にある『考える』『試す』能力を持つ人材を評価・育成してきました。考えて試すことで生産効率を高め、費用対効果の高い製品を生み出していたのです。しかし、IoTに取り組む際には、その前後にある『気づく』『伝える』能力がより重要になります。何にIoTの技術を活用するとよいかに気づくことで初めて、活用方法を考えて試すことができるのですし、最終的にIoTを活用する利点や優位性をお客さまに伝えることで、IoTへの取り組みが本格的に立ち上がるのです」

 IoTへの取り組みで「気づく」ことの重要性は想像以上に大きい。IoTでは勘と経験によるアナログな業務をデジタル化することによって何かが変わることに「気づく」ことが第一歩になるが、多くの企業ではアナログな業務が当たり前になっており、疑問さえ感じないことが珍しくないためだ。

 また、森川氏は「伝える」能力の重要性を、技術標準化の国際会議における日本と欧米の活動の違いを例に説く。「日本は標準化の国際会議に技術者だけを参加させていますが、欧米各国は、技術者に加えて同人数程度の人的なネットワーキング担当者を参加させます。ネットワーキング担当者は自由に発言できるバンケット(宴会)に参加し、自分たちと手を組むことの重要性を説いて回り、影響力を強めます」

 森川氏は、「インベンション」と「イノベーション」というキーワードでも「伝える」ことの重要性を説く。インベンションは技術的なハードルを超えること、イノベーションは顧客や社会のハードルを超えることだとそれぞれ定義すると、多くの日本企業はインベンションが得意だが、イノベーションが不得意になっているという。

 「技術的なハードルが高く、顧客や社内のニーズが明確な場合、インベンションが比較的容易にイノベーションにつながります。ICTではかつて、データの通信速度やコンピューターの処理速度、画面の色や解像度などに制約があり、その技術的なハードルを超えるインベンションが、顧客や社会のハードルを超えるイノベーションにつながりました。それがIoTの時代になって逆転し、技術的なハードルは比較的容易に超えられるようになる一方、顧客や社会のハードルがなかなか超えられなくなっています」

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