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IoTの勘所

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IoTへの取り組みを成功に導く3つのカギ

東京大学大学院工学系研究科 教授 森川博之氏

敵はどこから来るかわからないと思え

 続いて「競争相手」について森川氏は「敵が、どの業界からどのように参入してくるかわからない時代になってきました。5~10年後に、幅広い業界の主要なプレーヤーや業界という枠組が変化して予期せぬ競争相手が出現するのは確実でしょう。こうした大きな変化へ迅速に対応できるよう、一段広い視野を持ち、戦略を柔軟に変更できるようにしておく必要があります」と警鐘を鳴らした。既にいくつかの業界ではこうした変化が起きている。

 「ICT(情報通信技術)と金融を融合したフィンテック(FinTech)によって、金融業界では銀行や証券会社ではなくICT企業が新たなプレーヤーとしての実力を高めつつあるのは周知の通りです。また、米国のタクシー業界では、スマートフォンで一般車両の配車サービスを提供するウーバー(Uber)などが既存事業者の脅威になっています。ホテル業界では、一般市民の住居などをスマホやタブレットで宿泊施設として紹介するエアビーアンドビー(Airbnb)が競争相手として登場しました」

 森川氏はIoT時代には、ハードウエア販売からサービス提供へとビジネスモデルが変化することによっても、予期せぬ競争相手が出現する場合があると語る。

 ハードウエア販売からサービス提供への変化とは次のようなことを指す。海外旅行を行うとき、顧客は日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)といったエアラインのサービスを選ぶことはあっても、ボーイングやエアバスといった航空機メーカーを選ぶことはめったにない(例外的に、総2階建てのエアバスA380のように特色ある航空機に乗りたい場合はあるかもしれない)。こうした変化が新たな競争相手を生むという。

 森川氏はサービス提供への転換によって、例えば、ウーバーが自動車製造業の新たな脅威になり得ると語る。将来、顧客が特定車種を購入して乗り回すのではなく、自動車による移動サービスを求めるようになれば、配車サービスを提供するウーバーのニーズが高まり、ウーバーというサービスで、乗る車を選ぶ時代になる可能性があるという。例えば、スタンダードな車を配車する「ウーバー」と高級車を配車する「ウーバープレミアム」を選ぶようになると指摘する。

 「これまでIoTの恩恵をあまり受けていなかった業界でもこれからはビジネスのデジタル化が起こり、社会全体に影響が広がることが考えられます。どの業界で何が起こるかを詳しく事前に予測することは難しいのですが、経営者はこれまでになく大きな変革の時代に突入しているという感覚を持つことが大事です」と語る。

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