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経営層のための「稼ぐ力」を高める不動産戦略

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「働き方改革」を支える不動産戦略シフト

JLL 執行役員 コーポレート営業本部長 佐藤 俊朗氏

 多くの企業にとって、オフィスや店舗、工場、倉庫、研究所といった不動産は人件費に次ぐ2番目に大きな固定費である。不動産戦略といえば、従来はいかに賃料を抑えるか、資産を圧縮するかという短期的なコスト低減策が中心だった。しかし、ここ2~3年、人への投資の考え方が変わるのに合わせて、不動産という第2の経営資源に対する価値の捉え方にも変化がみられる。「稼ぐ力」を高める不動産戦略のあり方について、米系不動産総合サービス会社、ジョーンズ ラング ラサール(JLL)執行役員の佐藤俊朗氏が解説する。

企業価値のとらえ方の変化(より人にフォーカス)

 アベノミクスの柱の1つとして放たれた「働き方改革」という網の中にあって、企業の経営層、推進担当者、社員はそれぞれ「何をどうすればうまく進むのだろう?」と暗中模索しているのが実態ではないだろうか。

 働き方を変えるといっても、社員にこれまでより売上や利益を稼がなくてもよいとする経営者はいない。現在、日本の働き方改革の推進においては、労働時間短縮、在宅勤務の推進、育児や介護社員、女性、シニア人材活用、テレワーク推進といった時短や人材活用に焦点が当たり、人事部主導で制度や評価面の対応を進めているように見える。

 もちろん、これらは重要な着眼点である。しかし、働き方を支えるインフラである不動産戦略やIT導入といったワークプレイス変革を実施せずに、労働時間の短縮のみを目的に推進することは、社員に短時間でもっと早く手を動かして働くようにと負荷をかけているようなものではないだろうか。

 また、在宅勤務制度については、集中できる部屋やハイスピードのITインフラが備わっていない場合は長時間労働になりがちである。ここで経営者は、グローバルに注目されつつある、人を中心とした企業価値向上へのシフトに目を向ける必要がある。このシフトは先進企業の不動産戦略にも確実に投影されつつある。

 企業の人事戦略では、人という経営資源に対する考え方が大きくシフトしつつある。「優秀な人材が集まり、社員が生き生きと働いている会社は収益力が高い」。これはグローバル市場で株主や機関投資家が持ち始めている企業評価や投資判断の視点である。コストカットのために固定費のトップ項目の人件費を削減し、株主もそれを支持していた一昔前とは大きな変化である。日本では「働き方改革」と呼ばれている人にフォーカスした企業価値向上の推進は、今やグローバルな共通トピックであるが、少子高齢化が進み、労働力不足が加速する日本においてはより深刻な課題であることは間違いない。

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