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豊洲問題に見る「コンプライアンスの暴走」の危険

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 「都政大改革」「都民ファースト」を掲げて、一時より陰りが見えるとは言え、今なお、絶大な支持を誇る小池百合子東京都知事の手法は、悪役を仕立て上げ、対立構図を印象付ける「劇場型政治」に加えて、「透明性」「安心」などの曖昧で不定形な「コンプライアンス的フレーズ」を多用して、自己の対応を正当化するところに特色がある。

 「法令遵守」に凝り固まったコンプライアンスには弊害があるが、法令を超えた「透明性」「安心」の一人歩きも極めて危険だ。豊洲市場をめぐる問題は、まさに、小池氏による「コンプライアンスの暴走」が重大な事態を招いた事例だと言える。

安全性に関連するコンプライアンス

 官公庁や企業の事業や業務に関して、安全性や健康被害が問題になる場合、コンプライアンスの視点から問題となる要素が3つある。(1)「客観的な安全性」(2)消費者、利用者等の「安心」、そして、(3)事業や業務に関する情報開示・説明責任である。

 この3つの要素は、相互に密接に関わっている。

 まず、(1)の「客観的な安全性」が最も重要であることは言うまでもない。法令上の基準をすべて満たすだけではなく、考え得るあらゆるリスクに対応する万全の措置をとることが「安全コンプライアンス」として不可欠である。しかし、いくら客観的には安全であっても、そして、危険性が合理的に否定できても、安全ではない印象・イメージを持たれることで②の「安心」が損なわれる場合もある。

 そこで、重要となるのが、(3)の情報開示・説明責任を十分に尽くすことだ。それによって、「安全」であることへの信頼が確保され、「安心」を得ることができる。もし、情報開示が十分に行われていないと「隠ぺい」と批判され、事実に反する情報の開示を意図的に行っていた場合には、「改ざん」「偽装」「ねつ造」などといった厳しい批判・非難を受け、組織の信頼が失われるだけでなく、「安心」も著しく損なわれることになる。

 このような意味において、組織にとって、その活動をめぐる「情報開示」を積極的に行うことは重要である。

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