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労基署は見ている。

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監督署の指導を軽く考えた末の電通問題

原労務安全衛生管理コンサルタント事務所代表 原 論氏

 新入社員の自殺が労災認定された大手広告代理店問題で一躍注目を浴びる労働基準監督署。どんな組織で、どうやって情報収集・調査をするのか? どういう会社がターゲットになるのか? タレコミやがさ入れの実態は? 元監督官が知られざる全貌を明かす。

過重労働対策は避けて通れない

 私が退職してからの労働基準行政は、大きく動いていることは間違いない。これまで経験したことのないような状況になっている。おかしなところはたくさんあるのだが、労働基準行政については全く否定する気がないし、この行政が機能強化に努めてもらいたいと本気で思っている。

 そういう立場から見て言えることは、過重労働対策を怠ると、企業存亡の危機を招いてしまうということである。電通問題は、女性社員の自殺の原因が長時間労働だけではないことも指摘されているのだが、それまでの監督署からの指導を軽く考えてきた結果である。

 行政機関を軽視する姿勢は、ハラスメントがまん延する会社なら当然かもしれない。繰り返し言われても、小手先だけ改善すれば何とかなる。場合によっては、虚偽の書類をつくっていてもかまわないと......。まさか、社長が辞任しなければならない状況に追い込まれるなど、思ってもみなかったに違いない。

 ただ、今や時代の流れが大きく変わってきている。労働基準行政に、政府が大きく関わることなど思いもよらない事態だろう。首相の命を受けた大臣が直接指揮をすることに、霞が関も戸惑っていることだろう。

 労務管理問題を放置すると、取り返しのつかない事態にだってなりかねない。数年来のブラック企業の烙印などの比ではないはずだ。

 経営にとってリスク管理は非常に重要である。そのリスクのなかに、労務管理のリスクが存在する。どんなリスクが存在するのか、その洗い出しができずに内在させてしまったら、体ごと吹っ飛ばしてしまう時限爆弾を巻き付けているようなものだ。過重労働で健康障害を発症させる者が出てしまうと、まず臨検監督が実施され、労働時間などの管理が行われていなければ捜査が開始される。ノウハウの蓄積や局署間の連携により、送検までのスピードは以前よりも速まり、新聞やテレビなどの報道にもなりやすい。

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