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労基署は見ている。

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「ブラック企業」は常に見られている

原労務安全衛生管理コンサルタント事務所代表 原 論氏

全国ネットワークで情報共有

 労働基準監督署には「労働基準行政情報システム」というものがあり、全国の各監督署を専用回線でつなぎ、情報を共有することができる。このなかで、それぞれの事業場が、個別事業場情報管理のサブシステムにより登録され、ここに様々な情報が貼りつけられている。

 たとえばA社のB支店という事業場があれば、まず基本情報として、労働保険や労働者数、労働時間などの情報が入っている。そして、B支店に絡んで、本社や各支店を結合する企業全体情報というシステムを用いて、関連する事業場を登録する。

 監督を実施したら、監督結果等情報のシステムを用いて監督復命書を作成し、データはそのまま登記される。申告処理を行う際にも、その処理経過など、申告情報管理システムを使って入力する。就業規則、三六協定、預金管理状況報告、健康診断結果報告、安全衛生管理体制報告など各種報告が出されたら、OCR(光学的文字・イメージ読み取り装置)を使い、そのままデータを登記する。労働者死傷病報告が出されたら、それも同様に入力する。司法捜査を行い、送検したら、その結果も入力する。

 そういう形で、次々に各監督署においてデータを入力することで情報の蓄積を行い、その情報を共有することになっているのだ。そのため、異動などで新たな監督署に勤務することになっても、データを確認すれば、管内の企業の情報はすぐにわかる仕組みになっている。

 臨検監督を拒否したといったことがあれば、その情報もわかり、次にそういう形で問題が出てくれば、知らない会社であっても、すぐに事件として取り組むべき企業かどうかが、わかることになるのである。

 そういうことから、現在、申告常習事業場は、引き継ぎで伝達されなくても、全国のネットワークにより問題企業として洗い出すことができるのである。

 ちなみに、この労働基準行政情報システム、制度構築などを外注しなければならないため、厚生労働省の調達情報にそのシステム概要がわかるようになっている。そうでなければ、私もここまで記述することができない。

原論著 『労基署は見ている。』(日本経済新聞出版社、2017年)第5章「『ブラック企業』は常に見られている」から

原 論(はら さとし)

原労務安全衛生管理コンサルタント事務所代表。社会保険労務士。
1968年生まれ。1992年千葉大学法経学部卒。同年、労働基準監督官として労働省(現厚生労働省)入省。神奈川、埼玉、東京の労働基準局(現労働局)などに勤務後、2011年3月、退職。2012年4月、原労務安全衛生管理コンサルタント事務所を開設。

労基署は見ている。

著者:原論
出版:日本経済新聞出版社
価格:918円(税込)

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