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労基署は見ている。

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「ブラック企業」は常に見られている

原労務安全衛生管理コンサルタント事務所代表 原 論氏

 三六協定の手続きの問題が掲載されると、厚生労働省は速やかに臨検監督の実施を行わせ、その勧告を行うほど大きな影響を与えた。さらに、その渦中の会長が、翌年政権政党から立候補し当選することになったが、このことが政権与党のイメージ低下となってしまうことを恐れたのか、積極的にブラック企業対策を行うという方向に流れが変わり始めた。厚生労働省は、ブラック企業という言葉は使わず、「若者の『使い捨て』が疑われる企業等」という言葉を使って、その年の9月に過重労働の重点監督を実施して公表した。

 その後、消費増税による景気の落ち込みがアベノミクスを停滞させたことで、賃金上昇による消費拡大を目指し、さらなるテコ入れとして「日本再興戦略」のなかに長時間労働対策や働き方改革、同一労働同一賃金などが盛り込まれ、これまで政権が関わることの少なかった労働問題に、がっちりと取り組む姿勢を見せるようになってきている。

 過労死防止法も成立、施行されて、過労死防止を目指すという対策に取り組むさなか、平成28年10月に電通の女性新入社員の自殺が労災認定され、すぐさま東京労働局「かとく」による臨検監督、11月に実施した強制捜査と続き、年末仕事納めに送致されたことで、社長の辞任に至ることとなるのである。

 年明けには、社長の辞任にとどまらないという厚生労働大臣の談話が出され、さらに藤沢労働基準監督署による三菱電機従業員からの告訴による検察庁への事件送付へと続いている。

労基署がマークしている申告常習事業場

 実は、ブラック企業という言葉の登場する以前から、労働基準監督署ではマークするような企業があった。労働者から解雇や賃金不払いなどの申し立てが常態として発生しているような企業で、申告処理として受理することが頻繁にある会社を、「申告常習事業場」と呼んでいたのだ。

 インターネットがそこまで普及していない時期であったため、そういう企業への横の情報が少なく、繰り返し発生するといった側面もあったのかもしれない。監督署側でも厄介な会社という印象を持っているものの、一見、積極的に取り組むという程度ではないため、同じことが何度も繰り返されるような状況があった。実際には、こうした問題があっても、どこにも相談せず、そのままになってしまったケースも少なくないのかもしれない。それをいいことに、企業はわずかな利益を上げながら生き延びようとしていたのであろうか。

 ある有名な申告常習事業場は、労働基準法違反で告訴されることとなり、同時に民事訴訟で和解となって、労働条件改善に取り組むようになった。

 現在でも、おそらく申告常習事業場なるものは存在しているはずであるが、同時にネット社会であり、そのような企業はすでにブラック企業の烙印を押され、優秀な人材の確保などは困難な状況となっているのであろう。

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