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労基署は見ている。

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「ブラック企業」は常に見られている

原労務安全衛生管理コンサルタント事務所代表 原 論氏

 新入社員の自殺が労災認定された大手広告代理店問題で一躍注目を浴びる労働基準監督署。どんな組織で、どうやって情報収集・調査をするのか? どういう会社がターゲットになるのか? タレコミやがさ入れの実態は? 元監督官が知られざる全貌を明かす。

ブラック企業誕生から、電通、三菱電機に続く流れ

 ここ最近では、ブラック企業という言葉が当たり前のように使われているのだが、これは以前からあった言葉ではない。

 バブル経済崩壊後、就職氷河期と言われる時期がやってきた。企業は、リストラという名のもと、様々なものを切り捨てながらやりくりしてきたが、平成14年ころから円安を背景として輸出関連の企業が活況となり、労働力不足を招いた。その頃、小泉内閣が主導した派遣法の改正により、非正規雇用が拡大し、賃金の格差が生じ始めた。

 そうしたなか、平成20年に起こったリーマンショックに伴う深刻な金融危機により、景気が一気に冷え込み、それまで以上に就職困難な状況となった。会社も、バブル崩壊時よりもさらなる経費削減等を行い始め、就職しても、過酷な環境での勤務や離職を余儀なくされていく者が出始めることになる。

 一方、時代はすでにネット社会が到来、就職活動も企業情報収集もインターネットを通じて行うようになり、悪い情報についてもネット上で共有し合うことになっていく。そうしたなかで、過酷な労働環境にある会社、サービス残業が横行する会社、簡単に解雇する会社、ハラスメントなどが発生する会社などを、ネット上の隠語で「ブラック企業」と呼び始めた。

 平成20年に、居酒屋チェーン店ワタミの京急久里浜店に勤務していた女性新入社員が自殺する事件が起きた。平成24年に、神奈川労災保険審査官がその自殺を労災と認定し、遺族が記者会見を開いた。これに対して、同社の会長が労災認定を残念だとする内容をツイッターでつぶやいたことをきっかけに、ネット上で炎上する騒ぎとなった。

 その年の5月、東京新聞が同社に対する労基法違反問題の追及を開始した。ネガティブキャンペーンのように連日行われるようになり、他の大手紙も、その日の夕刊からこの問題を報じるようになった。実は、この間、東京新聞の記者が福岡にきて、私は取材を受けており、三六協定や長時間労働の問題に関してレクチャーしていた。そのため、この報道の最初の記事に私の名前が記されているのである。

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