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石澤卓志の「新・都市論」

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ブームの賃貸住宅投資、「目利き」が重要に

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 賃貸マンション・アパートの経営を始める人が増えている。賃貸住宅への投資は、これまでも、安定収入が期待できる資産運用として注目されていたが、2015年1月に相続税が増税された後は、節税目的の投資が増加した。その一方で、「賃貸住宅は供給過剰」との批判が強まっており、家賃の減額をめぐるトラブルも発生している。賃貸住宅の空室状況はエリアによって相当の差があり、その運営には、立地条件や需給動向を踏まえた「目利き」が重要と言えそうだ。

2015年以降、節税目的の賃貸住宅が急増

 賃貸住宅の着工戸数は、2014年4月に消費税率が引き上げられた直前に「駆け込み」で大幅に増加した後、その反動で減少傾向が続いたが、2015年から再び増加傾向に転じた(図表1)。

図表1:貸家着工戸数の推移 注:貸家着工戸数(月次データ)の前年同月比の推移。3ヵ月後方移動平均。<br>

出所:国土交通省「住宅着工統計」 注:貸家着工戸数(月次データ)の前年同月比の推移。3ヵ月後方移動平均。
出所:国土交通省「住宅着工統計」

 賃貸住宅の増加には、2つの背景があると思われる。

 1つは「不動産投資の一般化」である。不動産投資といえば、以前は富裕層が「余資」を運用する手段として行う例が中心だった。また、「土地持ち」の資産家が、所有地を有効活用してアパートなどを建設する例も多かった。

 しかし最近では、一般の勤労者にも、賃貸アパート・マンションの経営に取り組む例が増えている。低金利が続く中で「虎の子資産」を少しでも有利に運用するために、不動産投資が注目されるようになった。やや極端な表現をすれば、一種の「生活の知恵」として、不動産投資を始める人が増えたと言える。

 もう1つの背景は「相続税対策」である。以前より、不動産投資は節税対策として利用されていた。賃貸住宅経営による不動産所得が赤字となった場合には、給与所得などと損益通算して、所得税を軽減することができる。税法上の所得計算では、減価償却費なども必要経費として認められるため、実際は収入があっても減税となる場合がある。

 さらに、2015年1月に相続税が増税された後は、増税対策として賃貸マンションなどの経営を始める人が増えた。土地や建物の相続税評価額は、時価よりも大幅に低く、賃貸住宅の場合はさらに評価額が下がるため、節税が可能になる。一般的に、「自用」の不動産の相続税評価額は、土地(路線価)が時価の約7割、建物(固定資産税評価額と同額)が同6割程度と言われている。それぞれの地価評価制度では、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税評価額は同7割程度を「目安」に算定されることになっているが、公示地価は時価よりも低い場合が多いため、上記のような見方が一般的になっている。

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