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プーチン大統領は対中偏重を見直すのか?

藤 和彦 氏

ロシアの石油は日本のエネルギー問題解決の切り札?

 ロシアから日本に輸出される原油のほとんどがESPO(東シベリア太平洋石油パイプライン)で輸送される西シベリア産原油だが、イルクーツク地域の油田で商業生産が始まれば東シベリア産原油が初めて日本に輸出されることになるだろう。

 経済的に苦境に陥る中で、ロシアの石油産業はどのような状況にあるのだろうか。

 2016年11 月下旬にモスクワを訪問したIMF調査団は、「ロシア経済は原油価格下落と欧米の経済制裁によるダブルショックの影響を耐えきり、2016年の経済成長率は0.6%減少はするものの、持ち直しの兆候を示している。インフレ率も下がり続けている」と語った。

 ロシア中央銀行は2016年11月に入り「今後3年間、原油価格は1バレル=40ドルで推移する」との予測を立てたが、ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は11月25日、米フォーブス誌のインタビューで「原油価格が1バレル=25ドルまで下落する可能性は低い」とした上で、「たとえそうなったとしてもロシア経済にとって大惨事にならない」と自信のほどを示している。ロシアの原油生産コストは低いため、低油価に対する耐性があるからである。さらに輸出代金をドル建てで徴収し生産活動に関する国内での支払いをルーブルで行う石油会社は、ルーブル安から生じる為替差益で原油価格下落に伴う損失補填ができている。

 ロシアの2016年11月の原油生産量は日量1121万バレルとなり、ソ連崩壊以来の最高水準を維持している。

 このようにロシアの石油は日本のエネルギー基盤の脆弱性を是正するための切り札なのである。サハリン天然ガスパイプライン事業を契機にロシアとの間で石油を含めたエネルギー協力を拡大することで「脱中東依存」を進めることが喫緊の課題である。

藤 和彦 著 『石油を読む(第3版)』(日本経済新聞出版社、2017年)、第4章「新しいエネルギー戦略を目指して」から

藤 和彦(ふじ かずひこ)

経済産業研究所上席研究員
1960年愛知県生まれ。1984年通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー政策などの分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)、2011年に公益財団法人世界平和研究所に出向(主任研究員)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』(日本経済新聞出版社)、『シェール革命の正体』(PHP研究所)など多数

石油を読む(第3版)

著者:藤 和彦
出版:日本経済新聞出版社
価格:928円(税込)

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