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「1メートルは一命取る」実際にあった労災

原労務安全衛生管理コンサルタント事務所代表 原 論氏

ヘルメット未着用だけでは法違反にはならない!

 この事故は、簡単に言えば、作業者がヘルメットをかぶっていたならば、死亡事故までは防ぐことができた。しかし、荷台に乗って荷を動かしていた者は、1人としてヘルメットを着用していなかった。

 労働安全衛生法から派生している労働安全衛生規則という省令があるのだが、このなかには、ヘルメット着用に関しては、最大積載量が5トン以上の貨物自動車の荷積みや荷降ろしの際にその義務を課している。ここのトラックは4トンというものであり、結果的には、ヘルメット未着用自体は法違反にはならなかった。

 死亡事故という、被災者の無念を晴らすため、どうすれば送検できるのか、いろいろ考えてみた。こうなると、いわゆる「困った時の作業計画」しかない。つまり、様々な機械を動かす際には、あらかじめ計画を立て、安全に作業が行えるようにしなければならないと規定されている条文がいくつも存在する。そこに当たってみるしかないと考えたのだ。

 今回の事案では、フォークリフトを使用して、さらにトラックの荷台に積み込んでいたのだから、共に「車両系荷役運搬機械」という扱いになる。そのなかで、労働安全衛生規則第151条の3においては、「事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業(不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く。)を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。」と規定されている。この計画には、運行経路なども定めたものが必要となってくる。

 よし、この条文だ。これに基づく計画さえつくれば、荷台の上で作業することがなかったかもしれないし、フォークリフトで直接積み込むことで、荷を回転させることもなかったであろうと思われた。私は、これをベースに捜査を進めていく方針を固めた。

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