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石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

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チームメートのために働いてますか?

サッカー選手の岩政大樹氏に聞く

予防医学者 石川善樹氏

得意に逃げると実力はつかない

石川 なるほど。僕はよく、「得意に逃げない」という言葉を使うんです。好きなことはみんな一生懸命やるけど、嫌いなことや苦手なことを避けてばかりいると、本物の実力はつかない。研究の世界でも、ビジネスの世界でも、スポーツでも同じですね。

岩政 サッカー選手は引退した後、クラブのコーチに就いたり、解説者になったりしますが、やっぱりその仕事に真摯に向き合い、一生懸命やる人がうまくいきますね。その習慣が付いてないと、こなすだけになる。子どもを教えるのにどれだけ準備しているか、解説するのにどれだけ調べているか。仕事のレベルの差は如実に表れます。

石川 先日の講演でもう一つ、なるほどなあと思ったのが、トレーニングのお話です。成果が出るまで、かなりロングスパンで考えていますよね。

岩政 何でもそうだと思うんですが、1年目はパッと変化が表れて、2年目からは停滞期が続くことが多い。この我慢の時期はつらいのですが、僕の経験上、何年かかっても耐えていれば必ず花開く日が来ます。誰にでも。僕も若いうちは信じられませんでしたが、今はもう法則だと思っています。

石川 そこまで確信するに至ったのは、どんな経験からなんでしょう。

岩政 僕は鹿島に入るとき、プロのスピードに早く慣れて試合に出ることを目標にしていました。それが1年目の後半から出られるようになり、2年目にはレギュラーに定着することができて、そこから何をプラスしていけばよいか見えなくなってしまったのです。それでいろんな方に相談したり、本を読んだりした結果、体の動かし方を根本から変えることにしました。

石川 具体的に言うと、どういうことですか。

岩政 一言でいうと、体の動かし方をスムーズにするということです。どの競技でもトップアスリートの動きはみな美しいじゃないですか。それは適正な順番で、適正な筋肉を動かしているからです。ところがサッカーは動きが多様すぎて、何をどうトレーニングすればよいかが難しい。結局、パスやヘディングといった一つ一つのプレーでなく、根本から変えれば、枝葉の動きも変わる。そこにたどり着いたのです。

石川 その成果が出るまでに時間がかかったというわけですね。

岩政 ええ。24歳くらいからいろいろ試してみて、ようやく鹿島を退団する32歳くらいになってから、いろんなことがつながったなと実感しました。僕の場合、サッカーがへたというよりも、生まれつき体の動かし方が悪かっただけだと。逆に天才と言われる選手は生まれつき体の動かし方がうまいだけであり、僕は後天的に体に覚え込ませればいいだけだとわかったんです。これをやってなかったら、この年までサッカーを続けられなかったでしょうね。

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