日本経済新聞 関連サイト

石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

記事一覧

チームメートのために働いてますか?

サッカー選手の岩政大樹氏に聞く

予防医学者 石川善樹氏

試合中、すべての選手の心情を考える

岩政 うーん、僕自身はそう思ってないんですけどね。考える量は多いと思います。細かいところまで。試合中も控えを含めてすべての選手の立ち位置や表情、心情とかをざーっと考えてる。そんなことをやってる人はいませんから(笑)。あるいは、若手に声を掛ける時、ただ単に「がんばれ」とか「思い切ってやれ」じゃなくて、そいつがプロの世界で生き残るには何が必要か、相手の立場になって考えて声を掛ける。それがピタッとはまると「賢い」となるのかなあ。

石川 ビジネスのシーンで上司が「もっと考えてこい」と指示することがあります。これって、サッカーで言うと「ちゃんと点を取ってこい」というのと同じで、指示になってないですよね(笑)。

岩政 「もうちょい考えろよ」で通用する選手もいるし、その方がいい選手もいます。よくベテラン選手が若手に吠えることがあるんですが、たいていは自分がイライラしてるだけ。それは若手にも伝わります。吠えること自体が悪いのでなく、誰の視点で言ってるのかが大事だと思うんです。僕は相手をこっち側に引き込みたい、感情をもっと引き出してやりたいと思ってやっている。相手も時間がたつと理解できて、「あの時はありがとうございました」と言ってくれる。それはうれしいですよね。

石川 そこまでいくと、もはや教師ですね(笑)。

岩政 そうですね、ルーツはそうですから(笑)。

石川 先ほど、自分はうまくないとおっしゃっていましたが、もともとプロになる気はなくて、教師になるつもりで学芸大に進学されたんですか。

岩政 はい。誰も僕がプロ選手になるとは思ってなかったし、僕自身もそう自覚してました。東京に出たのは全国レベルを知りたかっただけなんです。ただ、僕がいた4年間、たまたま学芸大はタレントがそろっていて強かった。そこで学生選抜に呼ばれて、初めてプロを目指していいのかなと考え始めたのです。

石川 最初から目標が見えていれば、それに向かって人は成長していきやすいかもしれませんが、目標を持てない場合にどうやって自分を伸ばしていけるか。この春、就職した新入社員の方は、自分が何をしたいかなんてわからないし、夢や目標も持ちにくいと思うんですね。そういうとき、与えられた場所でちゃんと考えてやる岩政さんのような生き方が参考になると思います。

岩政 小さな町で育ったのがよかったのかもしれません。地域活動が盛んだったし、生徒が少なかったので、部活も生徒会も何でもやりました。両親が厳しかったので、勉強も手伝いもサボると怒られましたし。とにかくいろんなことを一生懸命やった。それが何につながるのかなんて考えずに。今考えると、一生懸命やる習慣が身に付いていることが、僕にとってすごく貴重だったと思いますね。

PICKUP[PR]