日本経済新聞 関連サイト

石川善樹の「脳とうまく付き合う法」

記事一覧

チームメートのために働いてますか?

サッカー選手の岩政大樹氏に聞く

予防医学者 石川善樹氏

だれを見てサッカーをするのか

岩政 プロの世界でこれは、僕の責任になりがちです。監督には「マークを外されたら、その選手が悪いんだから放っとけ。お前はお前の相手だけ見てればいいんだ」と言われたこともありました。監督の言うことは絶対ですから、そういう判断をする選手の方が大半です。でも僕はその考え方がすごくイヤだった。一体、だれを見てサッカーをやるのかと思ったのです。

石川 たしかに、監督を見る人もいれば、メディアを意識する人もいるでしょうね。

岩政 そうです。僕も最初は悩みました。仲間を助けたいと思う半面、監督によく思われないと試合に出られない。それでは意味がない。でもある時、こう考えて割り切ることにしたんです。僕はやはりチームメートを見てサッカーをしよう。味方の選手がそれで気持ちよくプレーできて、僕のことを信頼してくれれば、それがサポーターや監督にも理解されて、自然と試合に出られるようになるだろうって。

石川 すごく深いお話ですよね。ビジネスの世界でも今の時代は、顧客目線が強調されているものの、実際には上司の方ばかり見てる人が多い。仲間のために働くという視点は欠落しているんじゃないでしょうか。仲間が困っていたら助けるんじゃなくて、むしろ「近づかないようにしよう」と保身を考える人も多い。

岩政 試合後のインタビューを見てるとわかりますよ。誰を見てしゃべってるか。サポーターの評判を気にして、言い訳めいたことを言う選手もいます。僕はチームメートを意識して話すし、他の選手のインタビュー記事もよく読みます。こいつは今、何を考えてるのか、コンディションはどうなのか。チームメートの目が気になるし、みんなのことを何とかしたいと思うのです。

石川 そこまで仲間のことを考える人ってあまりいないですよね。

岩政 そうかもしれません。チームの中には1年間まったく試合に出られない若手選手もいます。たいてい、先輩はそういう選手には目もくれないで、試合に出られそうな選手をかわいがるんです。でも僕はそういうのが嫌いで、目立たない選手を何とかしたい、引っ張り上げてやりたいと考えてしまうんです。だから若い選手が僕のことをいろんなところで話してくれるんだと思います。

石川 そういえば、後輩の選手や他のチームの選手が岩政さんを評するとき、「賢い」という言葉を使われることが多いと思うんです。人から「賢い」と言われる人って、実はなかなかいないと思います。

PICKUP[PR]