日本経済新聞 関連サイト

石油を読む

記事一覧

石油について時代錯誤の論説に惑わされるな

藤 和彦 氏

天然ガスの利用増加で日本経済を活性化できる

 パイプラインの安全性はどうだろうか。日本ではパイプラインになじみがないため、懸念する声が少なくない。

 パイプラインによる天然ガスの輸送は、通常直径1メートル前後の口径の鋼鉄製パイプを数十メートルごとに溶接したうえ、ガスを輸送するための圧力を保つために数百メートルごとにポンプステーションを設けるのが一般的な形態である。安全性については、高圧の輸送幹線も低圧の配給管も地震などによるパイプ破断の際には、自動的にガスの流れを遮断できるようになっており、阪神・淡路大震災や東日本大震災の際にもほとんど被害が出なかった。しかも天然ガスはプロパンガスとは異なり比重が空気より軽いため、漏れてもすぐ上空に拡散するという「自然の安全装置」がある。

 広域のパイプライン網が構築されることは、各ガス事業者が管轄を越えて、その沿線の需要を獲得できることを意味する。現在、全国に200以上のガス会社が存在するが、総売上高の約9割が上位7社によって占められており、今後小規模のガス会社は大都市のガス会社とうまくアライアンスを組みながら、事業を展開していくことが重要になる。パイプラインで運ばれる天然ガスは、パイプライン沿線でガスを卸すことが容易であるため、沿線に天然ガスで機動的に発電することが可能だからだ。

 環境負荷の小さい天然ガスを用いたガスコンバインド発電やコージェネレーション(熱電併給)の導入が拡大すれば、老朽化した火力発電に過重な負担をかける必要がなくなる。

 また、天然ガスシフトは、新たな市場の創設や新しい価値を提供するビジネスの創出を通じて電力システム改革を加速することができるだろう。

藤 和彦 著 『石油を読む(第3版)』(日本経済新聞出版社、2017年)「はじめに」、第4章「新しいエネルギー戦略を目指して」から

藤 和彦(ふじ かずひこ)

経済産業研究所上席研究員
1960年愛知県生まれ。1984年通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー政策などの分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)、2011年に公益財団法人世界平和研究所に出向(主任研究員)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』(日本経済新聞出版社)、『シェール革命の正体』(PHP研究所)など多数

石油を読む(第3版)

著者:藤 和彦
出版:日本経済新聞出版社
価格:928円(税込)

PICKUP[PR]