日本経済新聞 関連サイト

先読み&深読み 経済トレンドウォッチ

記事一覧

米の政策実行力に不信も実体経済は強い

経済アナリスト 田嶋智太郎氏

 少し振り返ると、3月14~15日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)を境にして、米・日の株価やドル相場はひと頃の勢いをすっかり失ってしまったかのように見える。

 FOMCが行われた当時は、まだNYダウ工業株30種平均(NYダウ平均)が2万1000ドル近辺、日経平均株価は1万9600円前後、円相場は1ドル=115円近辺の水準にあった。それが、3月下旬には最も安いところでNYダウ平均が2万400ドル台、日経平均株価が1万9000円割れ、1ドル=110円台前半の水準まで押し下げる場面があった。米・日の株価の下げは知れたものだが、3月中に予定されていた数々の重要なイベントをこなすなかで一段の上昇が見られるとの期待も強かっただけに、どうしても市場のテンションは下がる。

 円相場に至っては、米利上げの3月実施決定や景気刺激的な政策の発表などによってドルの価値は上がり、長らく対円でのドルの上値を押さえてきた115円辺りの水準を明確に上抜けると一気に上値余地が拡がってくると見られていた。それだけに、FOMC後は市場におけるドル強気のモメンタムが一気に萎えてしまい、結果としてドルの買い方による"見切り売り"や"投げ売り"が相当に出ることとなってしまった。

 一体、なぜ市場の熱気は急速に冷めてしまったのか。多くのメディアが「トランプ相場は終息?」などとしているが、それは本当なのか。ここで3月のFOMC後に起きた出来事を振り返りながら、相場全体が調整局面を迎えた原因を探ると同時に今後の行方を展望しておきたい。

米大統領と米政権の政策実行能力に募る不信感

 既知のように、3月のFOMCでは、事前の市場予想通りに0.25%ポイントの利上げが決定された。しかし、FOMC参加メンバーらが見通す年内の利上げペースは前回の「年3回」から変更がなされず、結果的に「年4回への上方修正もあり得る」とした市場の期待は裏切られた格好となり、ドルは失望売りに押されることとなった。

 今になって考えてみれば、FOMCが行われた時点では、まだ米政権による景気刺激的な経済政策の具体策が示されていない。そのような状況で、FOMC参加メンバーらが「利上げペースは加速する」と見通すことには無理があったはずだ。つまり、事前の市場の期待は"先走り過ぎ"であったということになる。

 やはり肝心要は経済政策ということで、次に市場はホワイトハウスが3月16日に発表するとしていた「予算教書」の内容に注目した。しかし、実際に発表されたのは2018会計年度の「予算方針」であり、その内容は裁量的経費(政策経費)のみを対象としたものであった。

 そこには市場が期待していた社会保障などの義務的経費や歳入面の税制改革などは反映されておらず、予算の全体像を示す「予算教書」の議会提出は5月ごろになる見込みとされた。またも市場は肩透かしをくらう格好となったわけだが、あらためて冷静に考えてみれば、予算の全体像を示すためにはまずオバマケア代替法案(ヘルスケア法案)を成立させることが大前提となっていたわけであるから、正味のところ、むしろ市場は「勝手に期待して、勝手に失望した」ということになる。

PICKUP[PR]