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「攻めのガバナンス」実現への道

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三越伊勢丹HDは「三重苦」を乗り越えられるか

エゴンゼンダー代表取締役社長 佃 秀昭氏

 2015年6月に導入された「コーポレートガバナンス・コード」は、日本企業に「攻めのガバナンス」を促す内容だ。本連載では、日本企業が、いかに監督機能を強化し、中長期的な企業価値を向上していくべきかを論じる。今回は三越伊勢丹ホールディングス(HD)の社長交代を取り上げる。

時代錯誤感がある辞任劇

 前回は2017年の企業統治改革を展望した。企業統治が一過性のブームとして終焉する可能性に触れ、政府・企業・機関投資家が三位一体で改革を推進し、企業統治を形式から実質へ深化させる必要性を論じた(「企業統治」ブームは終焉するか?)。

 前回以降に企業統治関連で注目した報道は3つある。第1は1月27日開催の未来投資会議。第2は再燃している東芝問題。第3は三越伊勢丹HDの社長交代である。本稿では三越伊勢丹HDの社長交代を取り上げ、企業統治上の課題を考えたい。

旗艦店である伊勢丹新宿本店もかつての勢いはない 旗艦店である伊勢丹新宿本店もかつての勢いはない

 三越伊勢丹HDは、3月31日に大西洋社長が代表取締役社長を辞任し、4月1日に杉江俊彦専務が代表取締役社長に就任することを3月7日の取締役会で決議し発表した。正式発表の前日に報道された内容も含め、経緯を整理すると以下のとおりだ。

 3月6日の日本経済新聞は朝刊1面で、三越伊勢丹HDの大西社長が「3月31日付けで辞任することが5日わかった」との記事を報じた。同紙企業欄の関連記事には「後任未定のまま社長辞任」との見出しが踊った。

 翌3月7日の朝刊では、同日中に三越伊勢丹HDが指名報酬委員会と取締役会を開催し、大西社長の退任と新しい社長を決議する見通しを報道している。記事を読む限り、次期社長に関する観測記事はない。

 そして、3月8日の朝刊では、後任社長は杉江専務に決定したこと、大西社長辞任の背景に労組の反旗があり、石塚邦雄会長が大西社長に辞任を迫ったこと、杉江専務が経営陣を前に「まずは事業の多角化よりも本業の立て直しに力を入れたい」と語ったこと、杉江専務はJR大阪三越伊勢丹のプロジェクト責任者として成功したとはいえず、経営手腕は未知数であること等を詳しく報じた。

 後任未定のまま社長辞任が報じられたことは、三越伊勢丹HD社内が相当混乱していたことをうかがわせる。最近は大西社長の経営手腕に疑問を呈する怪文書が社内外に出回っていたとの報道もあった。一連の辞任劇から受けた個人的印象は、「時代錯誤感」である。

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