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IoTの勘所

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IoTは難しくない、失敗恐れずスモールスタートを

東京大学大学院工学系研究科 教授 森川博之氏

成果は予測できない、とにかくやってみる

 米国を中心としたスポーツのビジネスでもデジタル化が進んでいる。アメリカンフットボールやサッカーなどで、選手の位置情報をデジタル化して蓄積し、個々の選手のプレーの履歴や移動の状況などを表示できるようになってきた。

 「こうした取り組みはユーザー体験の向上を目指したものであり、収入増を狙ったものではなかったのですが、実際に取り組んでいくと収入増につながっていきました。選手のデータをアップしていくと、データを基にしたアプリをつくる関連ビジネスが拡大し、それによって若者のファンが増え始めたのです。米国ではスポーツファンの高齢化が問題となっていますが、デジタルデータを記録することで、若者のファンを取り込むことにつながり、放映権料が上昇するという好循環が生まれました。最初からそんな効果を狙ったわけではないのです。やりながら考えることで好循環につながったのですが、それこそやってみないと始まらないわけです」

 将来の売り上げや利益がどうなるか、予測できないのがビジネスだ。その中でもIoTは、今までのビジネスでは実現できていなかった生産性向上や価値創造を目指すものであり、先のことなどわからなくて当然と考えるべきだ、との指摘である。

 「IoTに取り組むとき、経営者が言ってはいけない言葉があります。『売り上げは何年後にどれだけ? 利益はどれだけ?』といったことです。先頭を走って新しい生産性向上や価値創造を目指す際には、やる前から売り上げや利益を考えても仕方ないのです。失敗を恐れず、走りながら考える、何がどう転ぶかわからない――というスタンスで取り組む中から、今後の成功事例が生み出されてくるのです」

 アナログのプロセスをデジタル化する気づきが生まれる環境を整え、失敗を恐れずにまずは取り組みを開始する。それが、森川氏の指摘するIoT事始めのポイントになりそうだ。

(フリーライター 岩元直久)

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