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IoTの勘所

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IoTは難しくない、失敗恐れずスモールスタートを

東京大学大学院工学系研究科 教授 森川博之氏

 IoT(Internet of Things)が世を挙げてのブームになっている。何かをしなければ乗り遅れるのではないか、だが何から手をつけたらいいのか――。ICT分野の担当者ならばかなり身近になってきた話題だろうが、経営者や管理職にとってIoTの森の霧は深く、進むべき道が見えにくい。本連載「IoTの勘所」では、有識者や実際にIoTを業務効率化や新ビジネスに活用しているキーパーソンに、IoTの捉え方、接し方、そして有効な活用の仕方について尋ねていく。

 第1回は、ICT社会の将来像を研究している東京大学大学院工学系研究科 教授の森川博之氏に、企業がIoTに取り組む際の目的意識の持ち方とスタートの仕方を聞いた。

<b></b>森川博之氏(もりかわ ひろゆき)</b><br>東京大学大学院工学系研究科 教授

森川博之氏(もりかわ ひろゆき)
東京大学大学院工学系研究科 教授

 IoTは「モノのインターネット」と呼ばれる。漠然とではあっても、これまでとは異なる「モノ」がネットワークに接続するのだろうというイメージはあるだろう。

 だが一般の経営者や管理職がしばしば困惑するのは、IoTのイメージをつかみにくいことではないだろうか。ある人は自宅のコーヒーメーカーがインターネットにつながるようなパーソナルな次元で「IoT」と言ってみたり、別の人は国を挙げて工場の産業機器をネットワークにつなぐような大規模な話を「IoT」と言ってみたりするからだ。

 森川氏はこう語る。「IoTについて、私は具体的な定義はしていません。IoTは、ICT(情報通信技術)と同じようなイメージで捉えてもらえばいいのではないでしょうか。IoTの目的は明確です。生産性の向上と価値の創出にほかなりません」。生産性の向上と価値創出が目的であるならば、確かにIoTはICTと同じ系譜のツールであることが感じられる。

 ただし、ICTとIoTの間には決定的な違いがあるという。

 「ICTは、コンピューターなどの情報通信機器を活用して、生産性の向上や価値の創出を実現してきました。しかし、業務の中にはまだ膨大なアナログのプロセスが残っています。これまでのICTでは、リアルな世界をさほどデジタル化することができなかったのです。一方、IoTの本質は、例えば工場の作業に代表されるような『アナログのプロセスをデジタル化する』ことで生産性向上と価値創出につなげることなのです」

 ICTは従来、紙に記載していたような「アナログ情報」をデジタル化して、オフィス業務の効率化を推進してきた。ところが最近になって、センサーの性能向上と価格低下により、紙以外のアナログ情報をデジタル化できるようになってきた。

 「人の動き、機器の稼働状況はもちろん、ゴミ箱に入っているゴミの量などもセンサーで感知できるのです。デジタル化できる範囲がぐんと広がり、あらゆるものの状況をデジタルデータとして分析できるようになったのです」

まずは「デジタル化できるアナログ情報」を見つめる

 もちろん、ありとあらゆるものがデジタル化できるようになってきたからといって、何でもかんでもデジタルデータにすればいいとは限らない。そこでは、「何がデジタル化できるのか」と「デジタル化することで何ができるのか」を一緒に考察する必要があると森川氏は指摘する。

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