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この時代を乗り切るワークスタイル改革

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シニアの活躍なしに企業の成長はあり得ない

自分楽 代表取締役 崎山みゆき 氏

 急速に進む少子高齢化。このままのペースでいけば2060年の総労働力人口は、現在と比べ約4割減の3795万人になると予測されている(※)。

(※)『人口減少と日本の未来の選択』内閣府、2014年3月

 そのような状況のもと、注目されているのは「シニアの労働力」である。総労働力人口が減少する中においても、65歳以上の労働力人口は飛躍的に伸びている。総務省統計局が2017年1月に公開した「年齢階級別労働力人口の推移」によると、2016年における65歳以上の労働力人口は783万人。10年前(2006年)の521万人と比べ、5割も増えている計算だ。

 「シニアの活躍なしに、企業の成長はあり得ない」。こう警鐘を鳴らすのは、「ジェロントロジー(老年学)」を研究する崎山みゆき氏である。社会全体が「シニア」に向かっていくのであれば、シニアを積極的に雇用しながら企業活動を維持・拡大していくしかない。もはやシニアは「支えられる側」ではなく、「支える側」の存在になろうとしている。興味深いことに、「シニアがイキイキ働いている会社には若年層も集まってくる」という傾向もあるそうだ。

 職場に「シニア」が加わることで、これからの働き方はどのように変化するのか。また、企業が変わらなければならないポイントは何か。崎山氏に聞いた。

「エイジ(年齢)」もダイバーシティーの1つ

<b>崎山みゆき氏(さきやま みゆき)</b><br>自分楽(じぶんがく)代表取締役。桜美林大学大学院国際学研究科修士(MA)、サンフランシスコ州立大学博士、静岡大学大学院事業マネジメント専攻客員教授。一般社団法人日本産業ジェロントロジー協会代表理事、「60歳新入社員倶楽部」代表

崎山みゆき氏(さきやま みゆき)
自分楽(じぶんがく)代表取締役。桜美林大学大学院国際学研究科修士(MA)、サンフランシスコ州立大学博士、静岡大学大学院事業マネジメント専攻客員教授。一般社団法人日本産業ジェロントロジー協会代表理事、「60歳新入社員倶楽部」代表

―― 労働人口の減少が懸念される中、「シニア世代」の労働力に期待が寄せられています。

 2013年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」によって、企業は60歳で定年を迎えた社員のうち、希望者に対しては65歳まで継続して雇用する努力義務を負うようになりました。内閣府の「平成27年版高齢社会白書」によると、60~64歳の男性の72.7%、65~69歳でも49.0%が就業しています。今後、労働人口の5人に1人は61歳以上のシニアになると言われています。しかし、シニア社員を雇用している企業の中には、課題を抱えているところも少なくありません。

―― どのような課題を抱えているのでしょうか。

 端的に言うと、若い経営者がシニア、特に古参社員の扱いに困っています。中堅・中小企業の経営者は、今、先代から引き継いだ二代目社長である場合が多い。また、企業研修を行うと、30~40代の社員から「年上部下のマネジメント方法」についての相談を受けます。年功序列の上下関係が定着している企業では、30~40代の社員が年上部下に指示を与える際、「目上にこんなことを言ってもよいのか...」と躊躇してしまうんですね。

 しかし、当のシニアは、年下上司から何か言われることについて、意外と気にしていません。東京都産業労働局が2013年3月に発表した「高年齢者の継続雇用に関する実態調査」によると、「年下から叱られることに抵抗がない」と回答したシニアは6割に上ります。

―― 若手のほうが余計な気遣いをしているのですね。

 むしろシニアの雇用で企業が取り組まなければならないのは、「エイジ(年齢)」を多様性の1つと認める「エイジ・ダイバーシティーマネジメント」の確立です。

 そもそも「ダイバーシティーマネジメント」とは、人材の多様性を理解し、競争優位の源泉として活用することです。現在のダイバーシティーは「女性」や「外国人」が中心ですが、年齢や世代が違う「シニア」も多様性の1つです。残念ながら今の日本企業はシニアの特性を理解せずに、仕事を割り振っています。そして若者と同じことができなければ「ダメな労働者」と烙印を押してしまう。これではシニアを正しく評価できません。今後、シニアの労働力を活用する企業は、「ジェロントロジー(老年学)」的な視点を持つことが大切だと考えています。

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