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石澤卓志の「新・都市論」

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公示地価、数値に表れない大きな「変わり目」

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 国土交通省が3月21日に公表した公示地価(2017年1月1日現在)は、全国・全用途平均が2年連続で上昇し、全国・住宅地が下落から横ばいに転じるなど、全体としては地価の回復を印象付ける内容となった。いずれも「ミニバブル」あるいは「ファンドバブル」と呼ばれる2008年以来、9年ぶりの現象である。地価は大きな「変わり目」を迎えていると言えるが、二極化・多様化も進行し、一律的な傾向では説明しきれない部分が増えている。

表面的な数値のみでは、市況を見誤る部分が多い

 公示地価は毎年「1月1日現在」で調査されているが、実際は調査時点から「過去1年間」の不動産取引などを基に算出される。このため公示地価は、足元の不動産市場の変化を捉えきれていない部分がある。今回の公示地価にも、表面的な数値だけでは、市況をミスリードしてしまう部分が散見された。

図表1:公示地価の年間変動率の推移 出所:国土交通省「地価公示」 出所:国土交通省「地価公示」

 今回の公示地価で、東京圏・住宅地は前年比+0.7%となり、前年調査(同+0.6%)よりも上昇率が拡大した(図表1)。しかし、東京圏のマンション市場は、売れ行きを示す初月契約率が低下するなど、不調に陥っている。マンション価格が「高くなりすぎた」ことが、販売不振の主因と考えられる。

 この状況を反映して、国土交通省が3カ月ごとの地価動向をまとめた「地価LOOKレポート」の2016年10月時調査では、東京圏の住宅系7地区が上昇から横ばいに転じ、「高くなりすぎた」反動が顕在化しはじめた。このため、9月20日頃に公表予定の基準地価(2017年7月1日現在)では、東京圏・住宅地の上昇率が縮小する可能性が高い。基準地価は、公示地価と同様の「過去1年間」の調査で、公示地価と合わせて6カ月間の地価動向を把握するために利用されることも多い。

 今回の公示地価で、大阪圏・住宅地は前年比横ばいとなり、前年調査(同+0.1%)よりも上昇率が縮小した。しかし、大阪圏のマンション販売はおおむね好調である。大阪圏の地価はエリアによって差が大きく、大阪市、京都市中心部、堺市中心部、神戸市南東部は上昇率が拡大したが、大阪府南部・東部、兵庫県北西部、奈良県南部、京都市周辺部などでは地価下落が続いている。大阪圏のマンション販売が好調なのは、「売れ筋」のエリアに供給が絞り込まれているためと考えられる。

 今回の公示地価で、大都市圏は住宅地・商業地・全用途平均とも4年連続で上昇したが、地方圏はいずれも25年連続で下落した。地方圏の下落率は縮小しているものの、大都市圏との格差は、むしろ拡大したと言える。地方圏の下落率が縮小したのは、地価が「下がりきった」ためで、必ずしも地方圏の景気が回復したからではない(後述の「地方4市」など、一部の都市を除く)。人口減少が続く地方圏では、地価が下げ止まっても、上昇に転じる可能性は低いと思われる。

 地方圏のうち「地方4市」と呼ばれる都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)は、住宅地・商業地・全用途平均とも3大都市圏を上回る上昇率を示した。これらの都市は、地方経済圏の中で進行する一極集中の恩恵を受けていると言える。このように、地方圏の中でも、地価の二極化が進行している。

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