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環境変化への不適応を糊塗し続けた東芝

郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原信郎 氏

 連結売上5兆6687億円、グループ従業員数18万7809人(2016年3月31日現在)に上る東芝は、日本を代表する企業である。その東芝が、今、存亡の危機とも言える苦境にあえいでいる。

 2月14日に、2017年3月期の第3四半期決算報告を延期するとともに、原発事業による損失が7125億円に上る見通しであることを明らかにしていた東芝は、3月14日、同決算報告の再延期を発表し、巨額損失発生の要因となった海外原発事業から撤退する方針を公表した。

 既に今期末の債務超過は避けられない状態(それに伴い、東証2部への指定替えとなる)だが、来期末時点で債務超過が解消されなかった場合、上場廃止に至る。しかも、米国での原発建設工事の遅れから損失はさらに拡大する可能性がある。外部からの新規の資金調達が困難な状況であるため、好調事業の切り売りを余儀なくされており、半導体事業に続いてメモリー事業も売却が進められている。

 2015年4月に、初めてインフラ関連の工事進行基準についての不適切会計の疑いを公表して以来、約2年の間、東芝の経営陣が行ってきた一連の不祥事対応は、長い歴史の中で企業組織に根差してきた「隠す文化」を反映したものであった。

 社外取締役中心のコーポレートガバナンスの先進企業のように見られていたが、実際には、ガバナンスは全く機能せず、財界のオールスター、法曹界の重鎮を揃えた取締役会の体制刷新後も、全く変わらなかった。

第三者委員会を用いた「隠ぺい工作」

 2015年1月、証券取引等監視委員会に対し、不正な会計処理が行われている旨の内部通報があった。証取委からの報告命令を受け、東芝は4月3日、社外の専門家を含む特別調査委員会の設置を発表、5月8日には第三者委員会の設置を発表し、事実解明に当たるとした。

 2015年7月に公表された第三者委員会報告書では、1518億円の利益水増しが認定された。そして、経営トップが高い収益目標を「チャレンジ」と称して現場に強く迫ったことが、不正な会計処理が継続的に行われた要因であるとして、経営陣の責任が厳しく糾弾された。その報告書の内容を受け、歴代3社長が引責辞任したことが大々的に報じられたことで、不正会計問題は幕引きという雰囲気が醸成されようとしていた。

 一方で、この報告書には、(1)調査対象が「損失先送り」という損益計算書に関するものに限られ、2006年に約6000億円で買収した米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の3500億円という巨額ののれん代の償却の要否などといった、会社の実質的な財務基盤にかかわる貸借対照表が除かれていること、(2)会計不正の問題であるにもかかわらず、不正の認識の根拠となる監査法人の問題が委嘱の対象外とされていることなど、不可解な点がいくつもあった。

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