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金融機関との関係構築は業績にプラス

日本政策金融公庫総合研究所 研究員 藤田 一郎氏

 金融機関が企業への与信を判断する際には、財務諸表などから得られる定量的なデータだけでなく、例えば経営者の資質やビジネスモデルの革新性、将来性といった定性的な情報の活用が不可欠です。どちらに重きを置くかは金融機関のスタンスによって若干の違いはあるとはいえ、各機関ともに両者を十分に吟味していると思われます。

 とりわけ、大企業に比べて財務諸表の整備が十分とはいえない中小企業への与信判断に当たっては、定性的な情報がより重要性を増すといえます。もっとも、こうした情報は誰もが容易にアクセスし、一朝一夕で入手できるようなものではなく、企業との関係を深めていくなかで蓄積されていくものです。

 1990年代後半に日本で発生した金融危機、そして不良債権問題の解決策の1つとして、リレーションシップバンキングが注目されるようになりました。この間、金融機関は資金供給以外にも情報提供やビジネスマッチングなど、さまざまな手法をもって中小企業への経営支援に取り組んできており、これらのサポートはおおむね肯定的に受け止められています。また、リレーションシップバンキングに関する学術的な研究も進み、そのメリットとデメリットが整理されてきています。ただ、これまでの研究の多くは、中小企業の資金調達環境に与える影響を分析したもので、業績に直接的にどのような影響をもたらすかという点については、研究の蓄積は途上にあります。

 金融機関との関係構築は、中小企業の業績にどのような効果をもたらすのでしょうか。日本政策金融公庫総合研究所が2014年に実施したアンケートの分析結果から、考えます。

調査対象は規模の小さな企業が中心

 アンケートの対象は日本政策金融公庫(国民生活事業、中小企業事業)の取引先のうち、返済状況などが良好、かつ、調査時点において業歴が5年以上の企業1万2000社で、3990社から回答を得ました。アンケートでは、企業と経営者のプロフィールのほか、「10年前」と「現在」の2時点における業績の傾向や経営のスタンスなどを尋ねています。以下では、「10年前」と「現在」で経営者が同一の企業を分析の対象とします。

 業種別では、製造業が26.5%、非製造業が73.5%でした。従業者数の平均は32.2人ですが、分布をみると、「1~4人」のカテゴリーが32.5%、「5~9人」が19.6%となっており、10人以下の小さな企業が半数超を占めている点には注意が必要です。業歴の平均は41.7年でした。

 分析対象企業の経営者が就任した年をみると、「1991~2000年」が35.2%と最も多く、「1981~1990年」が23.4%と続きます。「2001~2004年」は19.0%であることから、約8割の経営者は、2003年に金融庁が策定した「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づく、金融機関の変化を肌身に感じていると考えられます。ちなみに、平均年齢は61.0歳でした。

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