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デジタル変革マーケティング

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消費者視点とビジネス視点を両立するには

横山隆治氏 内田康雄氏

データドリブンは万能なのか?

 データドリブンな考え方、とりわけKPI(重要業績指標)マネジメントを中心とした考え方は、特定期間内に達成すべき数値目標を設定し、その目標への貢献度が高い取り組みを優先することによって、「合理的」に目標を達成しようという発想から成り立っています。

 成果を出し続けるために、今見えている数値「だけ」を追いかける──この前提でマーケティングや経営のあり方を考えたとき、乗り越えなければならない3つの課題が残されています。これらの課題をまずは認識し、将来的には個別突破していく中で、さらに進化したデータドリブンな考え方の道が開けていくと思います。

(1)定量的な目標設定の難しさ
(2)「資産」構築の発想の欠如
(3)見えている範囲外への想像力の欠如

(1)定量的な目標設定の難しさ

 目標を設定しましょうというと、たとえば「消費者とのコミュニケーションの活性化」「おもてなしレベルの向上」など、曖昧で抽象的な目標が設定されることがあります。しかし、この状態ではチームメンバーが具体的に何を目指していいかが分からず、チームを組織しても迷走しかねません。そのため大前提として、もう一段それをブレイクダウンして、達成すべき具体的なビジネス目標を掲げることが必要です。

 一方、具体的な数値目標を設定したとすると、今度は別の問題も出てきます。それは、ビジネスKPIへの貢献度は低いものの、消費者(顧客)ファーストで考えると先行的に取り組むべき施策が評価されにくくなり、リソースの投入が限られてしまうことです。

 その最たる例として、企業のオウンドメディアにおける「モバイル最適化」の遅れ、というものがあります。今ほどモバイル端末が普及していない数年前までは、スマートフォンを過半数が所持するということが確実視されていたにもかかわらず、多くの企業がパソコン用そのままで、小さな端末からは見にくく使いにくいWebサイトを乱立させていました。

 筆者が多くの企業でWebサイトのログを分析して、モバイルサイトのユーザー定着率が非常に悪く、意識調査の回答結果も優れていないので、今すぐにでも改善したほうがよいと伝えても、多くの企業からは、「今はユーザーが少なく、競合企業もやっていないのだから改善してもビジネス貢献は低い。だから、今すぐ対応する必要はない」という結論が返ってきました。

 このような答えから察するに、多くの企業では、ユーザーの共感を得て、将来価値を生む施策であっても、短期的なKPIに紐づかない施策には手を付けにくい状況があるのではないかと思います。こういった雰囲気に全体が包まれると、設定されているKPIに反映されなくとも、消費者1人ひとりの共感や利便性を高めるために大切な施策に関して、優先度や社内評価が上がりにくくなります。

 では、消費者(顧客)視点とビジネス視点をどう両立させればよいでしょうか。その答えは、コミュニケーションの「受け手」である消費者の基準から企業が考えられるようにする、ということに尽きると思います。つまり数値を追いかける以前の問題として、「この施策は消費者(顧客)、ひいてはブランド自身のために行うのだ」という目的意識に立って、全体の合意を取りながら進めるということです。関係者に意義を理解してもらうことから始めることによって、その施策を社内できちんと認めてもらうことが重要だといえます。

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